2006/3/26

from Cupertino via Frankfurt  写真・カメラ


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2006/3/19

「よぉ、早いな」  彼と彼女の風景
彼が1時5分前に駅に着くと、既に彼女は花壇のそばに立っていた。
「ちょうど良い時間のバスが無くってさぁ、10分も前に着いちゃった」
彼は彼女のすぐ隣まで来ると、手すりに腰を下ろした。

「それにしてもショックだよなぁ。あいつに彼女ができるなんて」
「あなたはどうなのよ、普段のあの元気の良さなら、彼女が居てもおかしくなさそうなのに」
「時々そんなことを言われるんだけど、全然ダメ。気配すらない。それよりお前はどう?」
「私も今日来るあの娘も全くダメなのよね。男子達の見る目が無いんだって二人で慰め合ってたんだ」
取り立てて美人ということは無いけれど、性格もスタイルも良いので、確かに一理あるなぁと、改めて彼女を見ながら彼は考えた。

「あっ...あれ見て!」
彼女の言葉に改札口の方を向くと、あいつが女の子と腕を組んでこちらに向かって来るのが見えた。
「あの娘だよ、俺がこないだ見たのは。あの野郎彼女を連れてきやがった!」
「あなた本当にちゃんと見てたの? よく見てごらんよ、あの娘が誰だか」
「俺はあんな髪の長いかわいい娘なんて知らないぞ!」
「もぉ、鈍いんだから! 彼女が眼鏡をかけて髪をポニーテールにしたのを想像してみなさいよ!」
「え? あぁぁぁ...!」
近づいて来る二人を指差しながら立ち上がる彼の仕草があまりにも面白かったので、皆笑顔になった。

「やぁ」
「やぁじゃねぇよこの野郎。しかしお前の彼女がクラスメートだなんて思ってもみなかった」
「ホントよねぇ。私にも黙っているなんて!」
「ゴメンね、隠すつもりは無かったんだけど、何か言いそびれちゃって」
「ま、そういうことで」
「何がそういうことだよ。今日はいろいろ聞かさせてもらうから覚悟しとけよ!」
「そうよねぇ、二人のデートのお邪魔虫になっちゃおうかしら」
「ま、ダブルデートだと思ってお手柔らかに...」

「ダ...ダブルデート?」
よっぽど動揺したのか、途中でひっくり返ってしまった彼の声に、空を仰いで皆で笑った。

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2006/3/12

「いつになったら  彼と彼女の風景
お前の彼女を紹介してくれんるんだよ?」

金曜日の昼休みに、またあいつがやって来た。
「またお前か、なんだかくどいぞ。彼女じゃなくてその友人狙いなんじゃないのか?」
そう言われて言葉に詰まり、照れ笑いをしている友人の向こうから、
「何か新しい展開でもあったの?」
と、彼女の友達が声をあげた。

「いや、こいつが全然彼女を紹介してくれなくてさぁ」
「でもお前の場合、動機が不純なんだよ」
そう言われて皆で笑ったあと、友人がぼそっとつぶやいた。
「お前は週末はデートかもしれないけど、俺なんか暇でさぁ... 部活も休みだし」

「そうだ、明日から名画座で『ALWAYS 三丁目の夕日』をやるみたいなんだけど、観に行かないか?」
「あ、いいな。私も一緒に行ってもいい?」
「私も観たかったけど見逃してたから行きたいな」
珍しく彼女も会話に加わって来た。
「俺も行くよ。どうせ暇だし。でも、お前はいいのか? 彼女と会わなくても?」
「全然大丈夫」
「そうかぁ? 実はすごく嫉妬深い娘で、映画館を出た所で鉢合わせして修羅場なんてごめんだぞ!」
その言葉にひとしきり笑ったあと、彼が言った。
「明日の1時に駅前で待ち合わせにしようか。みんな都合は大丈夫?」
頷く3人の中で、彼女だけが意味深な笑みを浮かべているのに、他の二人は全く気がついていないようだった。
「じゃあ、それで決まり!」

「よっしゃ、何か元気が出て来た!」
そう言うあいつの言葉に、また皆が笑い声を上げた。

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2006/3/5

「見たぞ! 見たぞ!」  彼と彼女の風景
大きな声を上げながら、友人が教室に入って来た。

「何だよ急に、いったい何を見たんだ?」
友人は彼の隣の席に横向きに座ると、続けた。
「しらばっくれやがって! お前だけはずっと仲間だと思っていたのに、このやろう!」
「だからいったい何のことだよ?」
「土曜日の11時頃、お前どこにいた?」
「土曜日か...駅前通りにいたかな?」
「いたかなじゃねぇよ。俺は見たんだよ、バスの中から。お前と髪の長い女の子が、腕なんか組んで歩いているじゃねぇか」
「あ... 見られたか」
彼はそう言うとにやっと笑った。
「にやけてるんじゃねぇよ。いったいあれは誰だよ?」
「バスから見えたんじゃないのか?」
「いや、髪の毛に隠れて顔がよく見えなかったんだ。でもあまり見たことがある気がしない」

斜め前の席の彼女と話していた女の子が、途中で話に加わって来た。
「なになに、浮いた話?」
「おう、こいつに彼女ができたみたいなんだよ。土曜日にデートしてるのを目撃した」
「ふーん、おめでとう。で、相手は誰なの?」
「まだ教えない」
「何だよもったいぶりやがって」
友人がそう言ったとき、始業のチャイムが鳴った。

「あーぁ、いいなぁ。今度その彼女を紹介してくれよな。ついでに彼氏募集中の彼女の友だちも」
そう言いながら自分の席に戻る友人を笑顔で送ると、彼は目線を前に戻した。

英語の教師が教室に入って来たのを目で追うクラスメート達の中、斜め前の席から彼の方を振り向いていた彼女がにっこり微笑むのを、彼だけが見ていた。

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