2007/1/14

「小倉あん2つ」  彼と彼女の風景
暖簾をくぐり引き戸をあけると、彼は店内のおばさんにそう告げた。

彼に続いて店内に入ってきた彼女が戸を閉めると、カウンターに戻ったおばさんが、型のそばで焼き上がったばかりの大判焼きを二つ取り上げた。
「包まなくていいよ、すぐ食べるから」
そう言って料金を払い、受け取った大判焼きの片方を彼女に渡した。
「うわぁ、おっきくてあったかい」
「そうだろ、この大きさがいいんだよ」
ニコニコ笑いながらそう言うと、彼は戸を開けて彼女と二人、表通りに出た。
「大きいだけじゃなくてとってもうまいんだぜ」
ふーふーと何度か息を吹きかけた後、彼は大きな口を開けてかぶりついた。

それを見ていた彼女も彼に倣って、両手で持った大判焼きを一口食べた。想像していたよりも大粒の小倉あんは、甘すぎることも無くとても美味しかったので、思わず笑顔になって彼の方を見た。
「おいしいだろ。あの店は俺が小さい頃からあるんだけど、未だにこれ以上うまい大判焼きを食べたことが無い」
そう言う彼もまた笑顔だった。
「こう寒いとまた一段とうまいんだよな」
彼の言葉に彼女が頷くと、彼はさらに続けて言った。
「夏になるとあの店はかき氷を始めるんだけど、それがまたすごいんだ」
「どうすごいの?」
「直径10cm位の器なんだけど、とんがり帽子みたいに高さが20cm以上になるんだよ。店の中に冷房が入っているせいもあるんだけど、最後の一口を食べる頃にはこめかみの辺りが痛くなったりするんだ」
「私も食べてみたいなぁ」
「よし、今度の夏になったらまた来ようぜ」
「うん」

笑顔の二人は並んで歩きながら、また大きな口を開けて大判焼きにかぶりついた。

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