2007/6/17

「そんなに  彼と彼女の風景
離れてなくても良いのにな...」

朝のこの時間、バスを待っているのは二人だけだ。

バス停のポールから数歩だけ離れて立っている彼女と、そこからさらに5mほど距離を置いた所で、バッグを置き、両手をポケットに突っ込んでいる彼。

この春から高校に通うようになった二人は、毎朝決まってこの時間のバスに乗る。毎日顔を合わせているのに、3ヶ月経った今でも一度も話をしたことが無い。

バスの音に気がついて右を向いた彼女の視線の片隅に、眠そうな彼がいる。バッグを持ち上げて肩に掛け、こちらに近づいて来た。バスは少しだけバス停を通り越して止まり、入り口のドアが開いた。

入り口に向かって歩き始めた彼女は、背後から近づいて来る彼の足音を聞きながら心の中で思った。

「バスに乗ったらすぐに振り返って、彼に笑顔で話しかけよう。最初に言うのはやっぱり『おはよう』かな? 2人掛けの席が空いてたら隣に座っちゃおう。変な娘って思われちゃうかな?」

バスのステップに右足を掛け、手すりにつかまって勢いよく乗り込んだ彼女は、既に笑顔だった。

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2007/6/9

「あのねぇ  彼と彼女の風景
お願いがあるの」

6時間目の授業が終わり、のんびり帰り支度を始めた彼に向かって彼女が囁いた。
隣の席に座っているので朝の挨拶くらいは交わすのだが、二人はほとんど話したことがない。

「なに?」
「買い物につきあって欲しいんだけど...」
「『買い物に』っていう限定が無ければすぐにOKって答えるのに」

彼の言葉に、二人とも笑顔になった。

「文化祭の模擬店に使うもの?」
「そう。今日実行委員長と行くはずだったんだけど、彼女休んじゃったから、誰か代わりの人って考えてたんだけど、あなた以外みんな忙しそうだし...」
「まぁ、どうせ帰宅部の俺は暇だけどな。で、何を買いにいくわけ?」
「ベニヤ板を3枚と、ポスターカラーを5色。作ってるうちに、最初に考えてたのより大掛かりになってきちゃった」

彼女が指差す先に、作りかけのカウンターがある。

「あの絵は全部一人で書いたの? さすが美術部だけあってうまいなぁ」
「ありがとう。で、つきあってくれる?」
「あぁ、いいよ。 さすがに一人でそんだけ持って来るには多すぎるしな。 買いに行くのは渋谷のハンズ?」
「そう」
「じゃあラッシュにならないうちに出かけるか」

そう言って立ち上がり、教室の後ろの出口に向かう彼に、彼女が続いた。

「限定じゃ無くっても良いんだけどなぁ...」

彼に聞こえないくらいの声でそうつぶやいた彼女は、嬉しそうに微笑んでいた。

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2007/6/2

彼と彼女の風景を  彼と彼女の風景
新たにこちらにも置きました。
各エピソード毎にアクセス数がわかるようにしたので、どんな風になるかちょっと楽しみ。
コメントも残せるようにしたので、お寄りの際は、ぜひ何か一言どうぞ。
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