2007/7/21

「あっ!」  彼と彼女の風景
思わず声が出てしまった。

先週末にオープンしたばかりのショッピングセンターの一角にある映画館。夕方の6時少し前にチケットカウンターに並んでいた彼は、カウンターの中にいる女性を見て驚いた。そこには、3月まで同じクラスだった彼女がにっこり微笑んでいた。

マニュアル通りと思われる挨拶の後、彼は映画と上映時間を告げ、空いている席を探してもらった。あと1時間ほどで始まるためか、既に8割ほどの席が埋まっている。

前から10列目の中程に、2つ隣合わせであいている場所があったので、その片方に決め、彼女に伝えた。彼女の指がマウスをクリックし、席が確保された。カウンター越しに見えるモニターで、その席が緑色に選択されたのが確認できた。

右手の人差し指を口元に運び、少しだけ何か考えた彼女の手がマウスに戻ると、その隣の席も緑色に選択された。

「あれ? 俺一人だけど」
彼のその言葉に、彼女はカウンター越しに彼の方に顔を近づけた。
「私と二人じゃ不満? 6時でこのバイト終わるし、この映画ずっと見たいと思ってたから」

彼女の指がキーボードの上できれいに動き、発券処理が進んだ。モニターに表示された金額の半分を彼に告げ、受け取った料金に自分の分を追加して、レジに納めた。数秒の後、発券機から出てきた2枚のチケットを、彼女は彼に渡した。

「すぐに着替えてくるから、あそこのソファーで待ってて。お腹すいちゃったから、映画が始まる前に何か食べに行こうよ」

「Closed」と書かれたプレートをカウンターにセットすると、彼女はもう一度彼の方を見て微笑んだあと、小走りにスタッフルームに入っていった。

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2007/7/1

公園の  彼と彼女の風景
角を曲がるとき、隅にあるブランコに誰かがいるのに気がついた。2つあるブランコの奥の方に座った制服姿の女の子が、下を見てじっとしている。

5歩くらい歩いている間に、向かいの家に住む幼なじみの彼女だと分かった。まだ夕食には少しだけ早いので、話でもしようと、彼は公園の入り口から中に入り、ブランコに向かった。

下を向いてじっとしていた彼女は、足音に気付き、顔を上げた。怪訝そうにしていた彼女だが、彼だと分かると、安心したような表情になり、あわてて両目をハンカチで拭った。

「よぉ、久しぶり」
彼の声にこくんとうなずいた彼女は、また下を向いてしまう。右手にはハンカチを握ったままだ。
「隣に座ってもいいか?」
再びうなずく彼女の隣のブランコに、彼は座る。
「うわぁ、ここのブランコってこんなに低かったっけ?」
それほど身長が高くない彼でも、両足を思いっきり曲げないと、うまく漕げないくらいだ。

「こんな時間に一人でメソメソしてると、怪しいやつに絡まれるぞ。俺でよければいつでも用心棒になってやるから、呼んでくれよな」
そう言う彼の言葉にまたうなずくと、一旦は収まった彼女の涙がまた溢れ出した。

肩をふるわせている彼女の隣で、彼は少しだけブランコを前後に揺らしながら真直ぐ前を見つめている。

そのまま5分ぐらいしていると、彼女の涙も収まって来たようだ。
ちらっと彼女の様子をうかがった彼は、立ち上がって彼女の前に来た。
「腹減ってきたから帰ろうぜ」
もうほとんど止まっている涙をもう一度ハンカチで拭い、彼女は口を開いた。
「何にも聞かないの?」
「俺はお前を泣かすようなくだらないやつのことなんか聞きたくないよ。さあ、帰るぞ」
そう言って差し出された右手に引かれ、彼女は立ち上がった。

2歩位先を行く彼に続いて、彼女も歩き出す。
「そういえば、幼稚園の頃あのブランコから落ちて泣いていたら、やっぱりあなたが来て、こうして家まで一緒に帰ってくれたよね?」
歩いたまま少し振り返って彼が言った。
「そんなことあったっけ?」
「うん、私覚えてる」

また前を向いて歩き出した彼に続きながら、彼女は何だか嬉しくなって微笑んだ。

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