2005/5/7

コンテナを  昔話
見ると妙に懐かしい気分になる。

友人がラジコンをやるのにつきあって自転車で出かけた本牧D埠頭。当時はまだ本牧に米軍ハウスが残っていて、金網の向こう、芝生の広がる広い敷地内を、ブレーキレバーの無い自転車に乗って遊んでいる子供達が別世界の人間に見えたっけ。

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2005/1/24

「これ...」  昔話
と差し出す彼女の両手には、幅が25cm位のラッピングされたものがあった。

「え?」
聞き返す彼に、彼女は答えた。
「この間貰ったぬいぐるみがとっても嬉しかったので、そのお礼なの」

3週間前に彼女が帰省する時、彼はちょっと早めのクリスマスプレゼントとして、彼女に大きなぬいぐるみをあげた。横浜駅から東海道線に乗って帰る時、彼女はそのぬいぐるみを袋に入れたりせず、そのまま左手で抱えていった。

「街を歩いていた時、ショーウインドーの中に飾ってあるのを見つけたの」
と彼女が続けた。

彼は受けとった包みをほどいてみると、2つの貯金箱だった。
「ありがとう、とっても可愛いな」
「よかった、そう言ってもらえて。少女趣味って言われちゃうかもって思ってたんだ」
彼女は本当に嬉しそうに微笑んだ。

「この貯金箱が一杯になったらどうしようか?」
キリマンジャロを一口飲んだ後、彼が尋ねた。

「そうねぇ... どこか食事にでも連れて行って」
そう言ってコーヒーを飲む彼女のしぐさを、彼はじっと見ていた。



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2005/1/19

横浜駅西口  昔話
市営地下鉄9番出口の階段を、二人は上がって来る。

「スケートなんて久しぶり。中学生の時、狐ケ崎に良く行ったっけ」
彼女はスリムのジーンズに白いコート。彼もスリムのジーンズにウエスタンブーツをはいている。
「俺も久しぶり」

150m位歩いてスポーツセンターに着き、リンクを見渡す。
元気な声をあげて追いかけっこをする子供達や、静かに滑るカップル、独り黙々と滑る上級者。
金曜日の午後4時。多くの人達が左回りに滑っている。

シューズを借りてリンクに降りる。
彼も彼女も、スケートがあまりうまくない。最初は手すりに掴まりながら周回する。
だんだんとカンを取り戻してきたところで、皆の列に加わり、手を繋いで滑り出す。

時折バランスを崩して倒れそうになるものの、互いに手をひき、何とか転倒を免れる。
彼が、転んだ子供を避けようと向きを変えたとき、勢いがつきすぎて半回転してしまい、彼女と抱き合う形になる。
それまで冗談を交わしていた二人が、一瞬真顔になる。次の瞬間には笑顔に戻り、何事もなかったようにまた滑り始める。

1時間半くらい滑って、二人はスポーツセンターを出る。

相鉄の改札口近くのイタリアンのお店に二人は入る。
彼はボンゴレを、彼女はドリアを頼む。笑顔で楽しく会話を交わしながら、少し早めの食事だ。
食後にはキリマンジャロ。二人ともブラックが好みだ。

店を出た後、ジョイナスに入りウインドーショッピング。
4階から順に降りてきて、最後は地下2階のエスカレータ脇のベンチに座る。
クリスマスの飾り付けの前で、共通の友人の話で盛り上がる。

明日から冬休みに入る。午前中にあった最後の講議に提出するレポートのため、二人とも昨夜は遅くまで起きていた。スケートで結構疲れたので、いつもよりは早いけれど、帰ることにした。

地下鉄に乗り込み、前から2番目の車両の3つ目のドア付近の席に並んで座る。
桜木町あたりから、彼女は眠ってしまう。
関内を過ぎた所にある大きな右カーブで、彼女は彼の肩に寄り掛かる。ぐっすり眠っているままだ。

彼も眠いのを我慢していたが、彼女が夢の中でくすっと笑うのを見た次の瞬間、眠りに落ちていた。

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2005/1/17

「じーじいる?」  昔話
と元気な声が玄関先で響く。

廊下を走り、小さな体で一生懸命階段を登って来る音がする。
私は頭だけカーテンに隠して、2階の部屋で待ち構える。
「みーつけた!」
と言いながら、お尻をピシャッとたたかれ、
「見つかっちゃった」
と笑顔を見せる。

私はまだ「じーじ」と呼ばれる年ではないのだが、2年くらい保育園入園前の女の子を我家でベビーシッターとして預かっていたことがあり、その子には「じーじ」と呼ばれていた。

「じーじ」と小さな男の子が言うケンタッキーのCM「公園でふと」遍を見て、そんなことを思い出した。
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2005/1/11

ある夏の日の  昔話
昼下がり、バンドの練習があり、大学の部室に出かけた。
2時間くらい練習した後、暑かったので窓際でぼんやりしていると、後輩の男性3人組がどやどやっと部室に入ってきた。

「先輩、鎌倉の花火大会行かねぇ?」

その花火大会は何度か見たことがあるが、さしあたって何の予定も無いので、見事な水中花火でも見ようと思い、一緒に行くことにした。一緒と言っても彼等は横須賀線、私はバイクで由比ヶ浜に向かい、落ち合う約束だ。花火は19:00開始だが、私達は17:00頃には由比ヶ浜に到着していた。

「先輩、暇だからナンパでもしねぇ?」

男4人揃って見ていても面白く無いので、女の子に声をかけて一緒に見ようというのだ。
幸い持ってきたビニールシートは特大なので、座る場所はいくらでもある。
ジャンケンで2人ずつのグループになり、交代で探しに行くことにした。
30分ほどで先発隊が戻ってきた。2人揃って両手で大きなバツを作っている。玉砕だ。

次に私達が出かけた。うろうろしているうちに、可愛い2人組を見つけた。
「2人だけで見ているより、大勢で見た方が楽しいじゃん」
とか言いながら、最後には土下座までして誘った所、一緒に見てくれることになった。
土下座した時は、彼女らの隣に座っていたOLらしきお姉様達の笑いまで取ってしまった。

彼女らと我々4人とで、20:00過ぎの終了まで花火を楽しんだ。

まだ帰るには早いので、6人で鎌倉駅前の喫茶店に入り1時間くらい話をした。
すると驚いたことに、1人は私の高校の後輩だと言う。以前鎌倉に住んでいたが横浜に引っ越して、きょうは久しぶりにもう1人の子と会ったのだそうだ。
22:00頃には帰ることになり、私がその後輩の女の子をバイクの後ろに乗せて送って行った。もう1人の子は後輩3人で江ノ電に乗り、送り届けた。

数日後、一緒に花火を見に行った後輩の1人から電話がかかってきた。彼は、私が送った女の子がいたく気に入ったらしく、彼女を降ろした場所を教えろというのだ。名前は分かっているので、だいたいの住所から電話帳で探すつもりらしい。面白くなりそうなので、場所を教え、2人でそれらしい電話番号を列挙してみた。

その年の秋、いつものように部室にいると、また後輩3人組がやってきた。

「先輩、高校の文化祭行かねぇ?」

話を聞いてみると、電話をかけまくって例の女の子を見つけだし、なんとつきあい始めたのだという。
その日は、花火大会で一緒にいたもう1人の女の子が通う、海が見渡せる高校の文化祭だった。
私達は4人揃って横須賀線と江ノ電を乗り継ぎ、その高校に行った。

つきあい始めた2人は、なかなか良い感じで校内を見て回っていた。残された男3人の内の1人は、もう1人の女の子に気があるらしい。仲間とわいわい騒いでいる彼女を見つけ出したので、彼は声をかけてみた。しかし、彼女はすぐにペコリとおじぎをしてどこかへ行ってしまった。

彼女の後ろ姿を見送りながら、彼がぽつりと呟いた。

「情熱としつこさは紙一重」

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2005/1/7

DOHC  昔話
2気筒のバイクが国道1号線から右折してきた。
そのまま3ブロックほど直進し、左手にある公園の脇にバイクを止めた。
バイクに跨がったまま左足でサイドスタンドを出し、172kgの車重をあずけた。
ステップに立ち上がり、右足を大きく後ろに振り出してバイクを降りた彼は、公園の中の公衆電話に向かって歩いていった。
左手で受話器を上げ、ジーパンのコインポケットから10円玉を1つ取り出して投入し、電話をかけた。
4つ目の呼び出し音が鳴り終わる瞬間に、受話器が上がった。
いつもより少しすました口調の彼女に向かって彼は言った。
「久しぶり」
「先週会ったばかりじゃない」
普段の口調に戻った彼女が答えた。
「今日はとても寒いな」
そう言いながら、彼は右手をブルゾンのポケットに入れた。
ポケットの中には、自動販売機で買ったばかりの缶コーヒーがあった。
横浜から160km程走り続けてきた彼の手には、その缶コーヒーは熱い位だった。
「窓から公園の方を見てごらん」
彼が言った。
「えっ?」
驚いた彼女は、受話器を置いて窓際に歩み寄り、右手に見える公園を見た。
2階の窓からは、ブルーのバイクと公衆電話の前で手を振る彼の姿が見えた。
「バイクで来たの?」
電話に戻った彼女は続けた。
「今すぐ行くから待ってて」
彼女が受話器を置いたのに続けて彼も受話器を戻し、傍らのベンチに座って缶コーヒーを開けた。
缶コーヒーを飲み、両手をあたためながら、彼女が近付いてくるのをじっと見ていた。


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2004/11/17

傾いた愛  昔話
大学時代、軽音楽のサークルに入っていた。

大学祭で演奏するだけで無く、年に1度くらい発表会を行っていた。神奈川県民小ホールや東神奈川駅前の神奈川公会堂等でやった覚えがある。

そのコンサートの飾り付けとして、アルファベットでライブコンサートと大書したものを作った。
一文字ずつ段ボールを切り抜いてアルミホイルで包み、ベニヤ板に並べたような作りだったと思う。

板に取り付ける段になって、近くから見てもバランスが分からないから、前の道路に並べたものを部室のある2階の窓から見て調整しようということになった。

全部並べると15m位あったのだろうか? ひとまず並べて部室からチェックしてもらった。
何とかバランスがとれてきた時、2階から声がかかった。

 「愛が傾いている」
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2004/10/22

Yokohama  昔話
大学を卒業するまで、ずっと横浜に住んでいた。
住所でいえば横浜市南区睦町、中村橋商店街のちょうど中程で商売をやっていた。

幼稚園から順に、通った学校を並べてみると:
 お三の宮幼稚園
 日枝小学校
 共進中学校
 緑が丘高校
 横浜国立大学
大学も自宅から通っていたので、早く家を出たいという願望もあり、大嫌いな満員電車に乗らなくて済むという条件にも合致する浜松の会社に就職し、22年間の横浜暮しに終止符を打った。

横浜→浜松と移り住んだので、次は松本あたりだと面白いかと思ったが、春野町に来てしまった。それでも市町村合併に依り、今度の7月からまた浜松市に戻ることになる。

やっぱり次は松本か?
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2004/7/15

東京湾フェリー  昔話
私がまだ小学校に通っていた頃、横浜港の高島桟橋と木更津港を結ぶフェリー航路があった。

祖母と姉・妹とでそのフェリーに乗って、8月のお盆の時期に、君津の親戚の家に遊びに行くのが恒例だった。横浜港のフェリーターミナルでは、決まって加山雄三の曲が流れていた。

伯父の家は自動車修理工場をやっていた。車好きの私は、皆の作業の邪魔にならぬよう、それでもできるだけ近付いて、修理する様子やエンジン・下回りなどをじっと見ていた。伯父には娘が二人いるだけだったので、「うちにこないか」と良く言われたが、半ば本気だったのかもしれない。

伯父の家の周りはほとんど田んぼばかりで、蝉を取ったり花火をしたりと、とても楽しかった。庭の井戸水で冷やした西瓜のとてもおいしかったこと! 川に連れて行ってくれて、目の前でウナギを捕まえてくれたこともあった。

この頃の、いわゆる「田舎」に対する印象が良過ぎたために、都会を離れて田舎暮しをするようになったのだと思う。
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2004/7/11

飲み込めない...  昔話
3年前の今頃、庭でバーベキューをやっていたら焼肉が飲み込みにくかった。

その時は、のどに炎症でもできたのかと、余り気にとめず、ビールで流し込んでいたが、日に日に症状が重くなってきて、飲み込むのが困難なだけでなく、声がかすれて出なくなってきた。
最後には、会社で昼に食べるそばが飲み込めずに、水で流し込まなければならなかった。言いようのない不安から来ていたのかもしれないが、冷や汗が止まらなかったのを覚えている。

さすがに不安になり、会社が休みの土曜日に天竜市の耳鼻咽喉科に行った。
症状を聞くやいなや、先生が言った:「これはまずい」
すぐ近くの脳神経科の病院に行ってCTだかMRIだかを撮り、それを持ち帰って見てもらっても原因が特定できない様子。

大きな病院で見てもらって下さいと紹介状を書いてくれたので、次の月曜日に会社を休んで浜松の総合病院に行った。そこでも原因が良く分からなかったものの「即入院」となった。

恐らくは、その症状からして、筋萎縮性側索硬化症と疑われていたらしい。

入院してMRIや脳内血管の写真を撮るなどしてようやく分かったのが、頸動脈の周りに何かできて、それが、左側の声帯を動かす時や飲み込む時に使われる神経を圧迫し、麻痺しているということだった。

その「頸動脈の周りにできた何か」が何なのか分からないので、首を切開して直接見てみようということになった。

首の筋肉の内側の頸動脈のそのまた内側の神経を見るために、7-8cm位切ったようだ。
開いてみても良く分からず、結局は癒着ぎみだった頸動脈と神経を剥がした程度で5-6時間の手術が終わった。

手術と前後して「頸動脈の周りにできた何か」は小さくなってきて、声も出るようになってきたし、飲み込むのもだんだん元に戻ってきた。

約1ヶ月間入院したが、真の原因は不明のまま、退院となった。

もう冷や汗を流しながらそばを食べるのは御免なので、再発しないことを祈っている。
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