私が毎週楽しみにしている番組「アメリカンアイドル」。歌手を夢見る何万名もの一般シンガーたちが、視聴者たちの投票で勝ち進んでいく番組だ。さて、
男女総勢12人が絞られたところで、毎週火曜日にテーマに沿った歌を歌い、番組中に視聴者は投票。翌日には結果が発表されて、一週間に一人落選していくようになった。
そして、今日は10人に絞られる夜。ハリウッドに残れるのは10人で、1人は家路へと帰らなければならない。しばらくこの番組を楽しんでいる身としてはどのシンガーたちも愛着があり、まるで親心のような気持ちで活躍を見届けたいきもちは山々だが、アメリカンアイドルになれるのは、わずか1人の選ばれしシンガーだけなのだ。
さてこの投票だが、一般視聴者によるものなので、予想外のことがたびたび起こる。火曜のライブパフォーマンスで相当ハイレベルなパフォーマンスをしていても、アメリカの視聴者達に愛されなければ、らくせんしてしまう。いっぽう、音のピッチをはずしたり、リズムが狂っていても、それ以外のところで理屈抜きでの魅力を持ったシンガーは視聴者達に共感を与え、ファンを獲得していくのである。
今回のメンバーの中で、抜群の歌唱力をもつのがMelinda Doolittle。彼女は今までスキをみせたことがない。バラードであろうがアップテンポであろうが、いつも完璧に歌いこなすことができるのだ。一方、男性陣の若手Sanjayaの歌声はか細く、お世辞にも歌がうまいとは言えない。しかし、彼にはどこか、若き頃のマイケルジャクソンのような風貌をもっており、なんともチャーミングなのだ。毎週ぎりぎりのところで生き延びてきた彼も週ごとにファンを増やしてきている。メディアによると、ファン層はローティーンから、インド系アメリカ人によるものだと推測されている。
さて、Sanjayaはそれまでのか弱いパフォーマンスから一転、とても無邪気にハードロックを歌ってみせた。案の定ピッチは不安定で、痛々しくもあったが、オーディエンスの中には彼をみて泣き崩れる少女がいたほどだった。番組終了後から、今日にかけてメディアはこぞってSanjayaのパフォーマンスを取り立てた。そして、彼の歌声にバッシングを投げかけたのである。とはいえ、これもスターの宿命なのだろうか、彼を賛美しているようにも思えたほど。
そして、今日落とされるべきメンバーが発表された。なんと、予想外のStephenyが落選したのだ。いつも、おしゃれでかわいくて、そこそこ歌もうまい彼女が、最下位になっていたなんて驚くばかりである。しかし、そつなく歌う彼女にも弱点があった。「コピーキャット」。まるでビヨンセの物まね沙汰のような彼女の歌声には、そのようなあだ名が付けられていた。オリジナリティが無く、いったい何をどんな風に歌ったのか、良くも悪くも視聴者達の心に爪あとを残すことができなかったStepheny。自分の個性を見極め、輝かせることは永遠の課題であるし、いくら天才的な才能をもっていても、それに苦悩している表現者達はいつの世も存在する。それとともに、今後のSanjayaがどのように変化していくのか、そしてバラエティ豊かなMelindaのレパートリーがこれからも楽しみでなりません。

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