◆溝口敦『細木数子 魔女の履歴書』講談社、2006/12
溝口敦はSUGEEEEE。
溝口敦の、では、何がすごいというのか。
それはですね、
辛抱。この人、
辛抱する力がすごいのだ。目的に達するまで我慢する能力。
この人のビブリオグラフィ(のごく一部)をじっくり見てもらいたい(Amazon.co.jpとWikipediaより編集して引用)。以前出版したものを加筆・改題の上文庫化することが多いので、以下のリストでは最初の単行本と思われるものを挙げてみた。
血と抗争―山口組ドキュメント (単行本 - 1968)三一書房
池田大作権力者の構造(単行本 1972/3)三一書房
堕ちた庶民の神 池田大作ドキュメント(単行本 - 1981/6)三一書房
サラ金商人 武富士・プロミス・レイク・アコムの“帝王”たち(単行本 - 1983/1) 現代書林
山口組VS一和会 山口組ドキュメント(単行本 - 1985/6)三一書房
荒ぶる獅子 山口組4代目竹中正久の生涯(単行本 - 1988/1)徳間書店
雲を駆る奔馬 3代目山口組若頭山本健一の生涯(単行本 1989/4)徳間書店
五代目山口組 山口組ドキュメント(単行本 1990/6)三一書房
食肉の帝王―巨富をつかんだ男 浅田満 (単行本 - 2003/5) 講談社
渡辺芳則組長が語った「山口組経営学」 (単行本 - 2005/7)竹書房
パチンコ「30兆円の闇」―もうこれで騙されない (単行本 - 2005/9) 小学館
山口組外伝 三代目直系「山次組」組長 日本人 山本次郎 (単行本 - 2006/9)竹書房
細木数子―魔女の履歴書 (単行本 - 2006/12) 講談社
この人、
本当に書きたいテーマをトラブルなく取材できるように、
超人的な忍耐力でもって根回ししているのがおわかりになるだろうか。
本当に書きたいテーマ(本当にヤバいテーマ)とは、
・創価学会[S、いわゆるシナノ(信濃町)]
・同和・食肉利権[B]
・在日・パチンコ利権[Z]
・サラ金・闇金・臓器売買
である。これらに斬り込む上で彼はまず、
広域暴力団の親分や幹部の(一見批判的なようだが実はカッコよく描いた)伝記やロングインタビュー本を作った。
これは
接待である。
松方さんに
バハマ沖でカジキを釣らせるのと本質的には一緒だが、気を遣う度合いにおいて次元が違う。
こうして顔をつないでコネを作り(その間単に
食べていくための仕事〜「性の彷徨者たち」1982年10月、「ニューサーティ・リポート
団塊の妻たちはいま」1984年6月、「あぶない食品物語」1993年7月、「人生の転機
ビジネスマンの生き方白書」1994年3月、「あぶない食品物語 (続)」1995年6月、「非倫
妻はつまらない」1996年9月、「食卓の怪談 新あぶない食品物語」1999年3月、「
社会人必須、今どきの科学」2001年10月、「ネット蟻地獄(スパイラル)」2002年10月、「
日本発!世界技術 この会社が経済再生の原動力になる」2003年3月、などがそれである、と思う〜もきっちりとやり)、上記の本当にヤバい世界を取材する上で、
証言者を紹介してもらったり、トラブルがないようにあらかじめ口をきいてもらったり、あるいはせめて妨害せずに知らんぷりしていてもらえるようにしたり、したのである(ま、これは
想像)。
(A)接待本の数々
・血と抗争―山口組ドキュメント
※当時は3代目(田岡)の時代。田岡は芸能界・興行界に深く関わっていた。
・山口組VS一和会 山口組ドキュメント
※一和会との抗争は4代目誕生がらみの問題なので、竹中伝への伏線となる。
・荒ぶる獅子 山口組4代目竹中正久の生涯
※
姫路出身・竹中を主人公にしており、竹中とその盟友山健を善玉に、当時の大幹部
である地道行雄と「ボンノ」こと菅谷政雄を悪玉にしている。
※地道の舎弟になった柳川次郎(大山倍達の義兄弟)は別に悪者にはされていない。
だが気になるのは、作中すでに本名の「梁元錫」で登場すること。当時は柳川で
通していたはず。
※この作品は
ももなり高が劇画化していて、すごい美化wま、
竹書房だからね。
・雲を駆る奔馬 3代目山口組若頭山本健一の生涯
※山健の伝記。
・五代目山口組 山口組ドキュメント
※
栃木出身で神戸の五代目になった変わり種、渡辺芳則の半生記。
・渡辺芳則組長が語った「山口組経営学」
※引退(現在は六代目・
名古屋出身の司忍)少し前の渡辺が
気持ちよく語りまくる。
ヤクザが商売する上で(暴力それ自体というよりも)「暴力の
イメージ」が重要なのだ
と喝破する渡辺は一瞬
丸山圭三郎に見えた。ヤクザにも
構造主義者がいるのか?
※しかし、渡辺組長ってすげえ
眉間の縦皺w怖ぇ顔だな〜。
・山口組外伝 三代目直系「山次組」組長
日本人 山本次郎
※わざわざ「日本人」とことわるところをみるとザパニージュなのでしょうかw
(B)本当に書きたかった本
・池田大作権力者の構造
※2005年9月、講談社+α文庫に。
・堕ちた庶民の神 池田大作ドキュメント
・サラ金商人 武富士・プロミス・レイク・アコムの“帝王”たち
※講談社+α文庫から2004年4月『武富士 サラ金の帝王』。
・食肉の帝王―巨富をつかんだ男 浅田満
※大阪羽曳野「ハンナン」のボス、浅田の半生を追った作品。
第25回講談社ノンフィクション賞受賞作。ちなみに浅田はその後
全国同和食肉事業協同組合連合会(全同食)の牛肉偽装事件でタイーホ。
※文庫改題「食肉の帝王 同和と暴力で巨富を掴んだ男」。
なんというか、題名がストレートすぎてこれだけで著者の安否が気遣われるw
※つってるそばからキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!! ていうかすでにキテター。
今朝(2006年12月20日)の産経抄。
「▼今年1月、暴力団関係の著作で知られる作家、溝口敦さんの長男が襲われた」
※ちなみにファンタジー突破者
宮崎学氏は、「『同和利権の真相』の深層」という
本を解放出版社というわかりやすいところから出しています。これは竹中労とか
岡庭昇とか平岡正明とか丸山実とかが「メディア支配を超えて」みたいなタイトルで
その実「創価学会を叩く
週刊新潮はけしからん」という中身の本を書いて生活して
いたのを
しみじみ思い起こさせます。文筆一本で
食べていくということの、
嗚呼、何ぞ太(はなは)だ難き。
・パチンコ「30兆円の闇」―もうこれで騙されない
※西原理恵子は
警察官僚の天下りのことは書くのに、同じパチンコ業界でも
北朝鮮への送金のことは一切書いたことがないのですがどうしてでしょうね。
おっと、お父さん
うっかりして全然関係ないこと書いちゃったよ。ごめんね。
・
細木数子―魔女の履歴書(本書)
みてください、この
ラインナップのきわだつ違いをw
(A)は
竹書房や
ミリオン出版や
コアマガジンでも堂々と劇画化して載せられる、
ヤクザを英雄視して美化してる物語(一見批判的に見えるがそれはアリバイ。『悪魔の毒々モンスター』が、ドロドロを見せたくて作ったのであってバイオハザードの危険を世に訴えたかったわけではないのと一緒です) 。DQNの人たちはもしかしたら真に受けてシビレてるのかもしれないが、「侠」と書いて「おとこ」と読んだりしてる暇があったら普通の漢字をもっとちゃんと覚えろ。
(B)は
上記三社の実話誌には決して載ることがないw
そして溝口が偉いのは、接待・布石本の(A)の読み物としてのクォリティもまたすごく高いこと。
で、
本書、『細木数子―魔女の履歴書』は、堂々の(B)なわけですよ......。ああ、こわ。
[追記]
以前『幸せって何だっけ』という番組を見たら、細木数子、
料理の手際がいいんだwんで、「あたしって何て料理うまいんだろう!」っていうセリフが嫌味に聞こえねえんだwこりゃ、ファンは参っちゃうよな。
林真須美も、あり合わせのもんでささっと作るの上手だったって聞いたことがあるが、なんかあるのか、料理の手際と
ヤクザの姐さん/女極道の素質との間に関係が。
ちなみに、小島一志ほか著『大山倍達正伝』によると、大山の奥さん(智弥子未亡人)は料理がだめだったらしいw

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