軍政ミャンマー当局は、いくら叩いても構わないフォーゲルフライの存在にされてしまった。
ミャンマー軍事政権をjunta即ち「軍閥」呼ばわりし、孤立させ、今のような立場に追い込んだのは外国のメディアの不公平な報道と、(何千キロも離れた外国で、なんとなくテレビを見ていて)それに影響された気まぐれな有権者の顔色をうかがう無定見な政治家たちである。
では、何が不公平であるか。
ミャンマー軍政よりももっとずっと抑圧的な、もっと狡猾な、もっと残忍な国家、例えば中国の、人権蹂躙についての報道はまったくしないかそこそこにとどめるかして、文句の言い易い(=
強く抗議してきたり嫌がらせしたり、後々とんでもない仕返しをしてきたり、する能力の全然ない)ミャンマーの方だけを叩きたいだけ叩いてきたことだ。
要するに、
やり返される憂いのない、いじめやすい相手を選んでいじめた、ってことだ。
その結果ミャンマーは必要以上の孤立を余儀なくされ、皮肉にも、(ただひとつミャンマーに手をさしのべた)中国との結びつきを強める結果となっている。世界中が冷たくして手を引いたミャンマーの隙間に、中国が入り込んだのだ。
中国はミャンマーへの海外プレスの批判的報道を自国への批判をかわす隠れ蓑のように利用して得をしてきたのだから、これはある種のマッチポンプであり、その面の皮の厚さには驚嘆するしかない。
今や北朝鮮とミャンマーは中華帝国の衛星として「トラブル起こす役」「嫌われる役」、バッドガイ役、に収まったようだ。こいつらチンピラが女の子に嫌がらせする。すると「正義の味方」のアニキが「コラコラお前ら何やってんだ」と出てきて女の子を助けてくれる。チンピラは「お、覚えてろー」と言って退散する。が、この「アニキ」と先程のチンピラはもちろんグルであって、役割分担した輪姦チームに過ぎない。まんまと女の子を騙して確保した正義のアニキに先程「撃退された」チンピラは、後でおこぼれをもらう。そしてアニキ御本尊の方の尻に火がついてやばくなれば、ごくあっさりと切り捨てられるであろう。
日本の場合、政治家とプレスだけでなく、宗教界(と教育界と法曹界と財界)もミャンマー叩きと中国擁護のひどい落差において軌を一にしている。
日本のカトリック司教団は、ミャンマー(と日本[国名すら忌避されてしばしば「どこかの国」「この国」と呼ばれているのはこの国である]とアメリカ)を叩くことは片時も忘れないが、中国と北朝鮮の批判は決してしないのである。また、サダム・フセイン政権の批判も私の知る限り一度もしたことがない。
かりに、よく調べれば何度かしてないこともないのがわかったとしても、その場合はアメリカ政府と日本政府を批判する言辞の多さとの際だつアンバランスの実態がむしろ暴露される結果となるであろう。
今春のチベット暴動についても、カトリック系マスコミは『カトリック新聞』から『心のともしび』まで、完全に沈黙した。それでいて、四川大地震に際しては、カトリック系の団体「カリタス・ジャパン」は、台湾大地震の際には一切やらなかった(少なくとも、私の記憶にはない)募金を行っている。
スー・チーのような人物は、中国だったら「自宅軟禁」ですむであろうか。おそらく国内にいられないであろう、刑務所と墓場以外は。北朝鮮については文字通り「言うまでもない」。
なお、ミャンマーの僧侶たちは報道で印象づけられているような「何も持たぬ弱者」なのではない。
チベットとまったく異なり、ミャンマーでは仏教界は今も大いなる権威と社会的・政治的影響力の源泉なのだ。そして民族と言語を実際に横断し超越する巨大な全国組織でもある。
ミャンマーにおいて、一方「国軍」は、(1)少数民族[勢力の中にある分離主義]に対して国家と国民の統合を保つ物理的な力の象徴であり、(2)上座部仏教界に対して世俗的政治権力を象徴する存在である(非軍事的・非宗教的政治勢力は少数民族の不満を抑える現実的な力を持つほど育っていない。軍隊が妨害して育てなかった、のではない。ざっくり言えば知識人がひ弱だったのだ)。軍隊と妥協できない者はビルマにおいて権力の座につくことはできない。スー・チーは、まさにそれゆえに、これからも在野人士であり続けるほかないのである。
中国は「ミャンマーよりまともな国」なのではない。
「ミャンマーより(大きく、強く、経験豊富なので、それゆえに)巧妙な統治(と情報統制)をする国」であるというのが本当のところだ。
「
スカートめくりをとがめられて謝らずに逆ギレする小学生」と「
弁護士に入れ知恵されて遺族の前で深々と頭を下げてみせる強盗強姦殺人放火犯の元少年」とでは、後者の方が「素直で礼儀正しくていい子」なのであろうか。私には前者がアマチュアで後者がプロであるというだけのように思えるが、違うのか。
ミャンマーだけを叩きに叩いて追い詰め、いじめ抜き、何の選択肢も与えず今の袋小路状態(実は抜け道が一つだけある。上述したように中国が[裏口から]援助している。だからこそ、まだ潰れない)にまで追い込んだ我々が、今また彼らだけを執拗に叩き、「それにくらべて中国は(四川地震で)よくやっている」などというのは、マッチポンプでありかつ烏滸の沙汰である。
いい加減恥を知るべきだ。
我々は、ミャンマー軍政を叩くエネルギーの、その十分の一でも中国批判に振り向けたことがあるか。
んで、アジア問題についてよく触れるプレスがまた、オソマツだ。
英誌
Economistは、自由・民主の守護神ぶっているが所詮は投機家の参考資料だ。これからは上海ですよ、というついでに叩きやすいものを叩いて暇潰ししてるのだ。読む方も、ああ俺は本当は人権に関心がある人なんだな、ただのカネの亡者じゃなくて、と安心できる。エロい週刊誌にアリバイ作りのように「怒れ国民!」とか「どうなるニッポン」とか書いてあるのと同じことだ。
Asiaweekは一見中国について辛口批評ばんばんかましてるように見えるが、所詮は香港ベースだから、書いても書かなくてもいいことしか本当は書いていない。というか、「香港のプレスは自由にモノを言っている」という中共の宣伝に利用されているようなものだ。所詮ママゴトのようなフリープレスごっこであり、またこいつらも施行舟にあらずして女房子を養うところのつまりは世渡るたづきなのであってみれば、いざとなりゃ「ダライラマは困ったトラブルメーカーだ」ぐらいのことは恬として恥じることなく書きかねない。
それでもこれらは日本の自称マスコミよりはかなりマトモではある。
『ジャパンタイムス』はあまりにもサイテーな新聞なので論評に値しない。焼芋包む役には、それでも十二分に立つ紙ではある。
これでトイレに流せたらもっとよいだろう。
『デイリーヨミウリ』はオリジナルを発信するような一丁前の「プレス」ではなく、海外プレスから買った記事をそのままあるいは要約して載せてるというような日刊ダカーポ新聞だ。
あと日字各紙は言うもさらなり。自分で現地取材してるのかどうかすら定かでない。
お前らなあ、今すぐ
ジャスコで中国製のロープを買ってこい。
それで首吊って死んでしまえ。
いかにシナ製じゃとて、お前ら程度を吊ったぐらいで満更切れもすまいて。

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