◆おおひなたごう『犬のジュース屋さんZ(ぞね)』@-B(集英社 YJコミックス)
後味悪いマンガだなこれw・・・。
主人公の「犬さん」(語尾に必ず「ぞね」を付ける)が、野球場の外野でジュース屋をやっていて、それがなぜか「粉」だとか、そんな基本設定は別にどうでもいいのだ。
それ以外の設定が怖すぎるのだ。
ものすごく邪悪なものがさりげなくいたるところで顔を出してくるから。
犬さんの友人の少年「立体くん」は、子供なのにナルシストで(裸で鏡を見てうっとりするのが好き)エロDVDマニアで(部屋中ティッシュだらけ)振り込め詐欺師で守銭奴(大金の入ったセカンドバッグを持ち歩く)・・・。
もっとも嫌なのは、立体くんが、いじめられっ子(「番長」というキャラにいつも拷問される。とうとう額に東京都のマークのタトゥーを入れられ、一生消えない)でありながら、自身は振り込め詐欺の加害者であることだ。
・何気ない気晴らしや暇潰しで他人をいじめると、いじめられた方は生涯消えないダメージを体と心に負ったり、
・それが被害者の家族の人生までも決定的に狂わせたり、
・いじめられた方は別のもっと弱い標的を見つけて加害者になったり、
・最後は自分より弱い者が探せない奴は追い詰められて精神を病んで破滅したり、
・善意の第三者が悪事に荷担させられていたり、
・結局捕まるのは末端の小物や善意の第三者や濡れ衣着せられた人だったりする
・・・
という構造が透けて見えるようなマンガをだな、ギャグとして楽しめちゅうんかいワレー。
こんなのありがたがる奴は作者もろとも氏ねよ。
と言いたいところだが、中にはすごくいい回があるからまあいいや。
第1巻の帯の文句「軽くヤバイ本。」なんて、ヴィレッジ・バンガードの店長が手書きで書くようなことだろ本来。版元が自分で言うなよな。
実際、ヴィレッジ・バンガードがイチオシしそうなたぐいの、
ひねくれた本だ。こんなのとか井上三太とか読んで、おまえら、楽しいのか?
「うそ寒さ」「怖さ」「邪悪さ」「心が壊れていってる人々の、仮面のような無表情」というのが、ギャグマンガなのに実に実に濃厚に湛えられていて、相当に嫌な後味の作品だけど、まあ、しかしこれ、それでも味がある。
ギャグだけど、そこに出てくる人間の
薄汚い小悪党ぶりに真実味があって、そこが嫌なんだがw。
もし作者に会うことがあったら必ず苦情言ってやるw
ところで、「犬さん」に、ガールフレンドのサルの「エテファニー」ちゃんがプレゼントしてくれた手製の帽子、「犬」という字を刺繍したつもりが間違って「尤」になっているのに誰一人指摘せず気づきもしないという設定になっている。
が・・・
「尤」の字が「犬」に似ているのは実は偶然ではない。「尤」とは、斃れた犬の形だからである。
【今週の結論】白川静は偉い。

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