『日本沈没』がリメイクされたので、学生に聞かれた。「先生、日本って本当に沈むのかなあ」
大人気ないマジレスで申し訳ないのだが、
以下に挙げる理由で、沈みません。
小松左京のオリジナルによれば日本が沈むメカニズムというのはこうである。
太平洋プレートがユーラシアプレートにもぐり込む時の摩擦エネルギーが日本海側へ大量に「抜け」てしまうために太平洋側が「しぼんで潰れ」、南側から断面を見ると列島は時計回りに(太平洋側へ向かって)回転する。これを真上から見ると列島のほぼ全域が海面下に「沈む」ように見える。
このエネルギーの「抜け」によって、当時謎とされていた「
日本海の異常な地殻熱流量(の高さ)」(私が高校生の頃、70年代末、の地学の教科書にははっきり「理由がわからない」と書かれていた)が説明できるというすぐれものの、シビレる「理論」であった。
ところが事実は小説より奇なり。日本海の底を含む東北日本一帯は従来、ユーラシアプレートの一部であると当然にも考えられていたのだが、驚くべし、実は
北米プレートの一部が垂れ下がってきている箇所であることが、
日本海中部地震(その瞬間私は故郷の秋田にはおらず、学生やっていた金沢市でカレーうどんをすすっていた)などがキッカケで80年代初頭以降唱えられ、実際そうであるらしいことが判明してきた。
従って現在、日本海の地殻熱流量異常はこれによってほぼ説明がつくものと考えられ(つまり、何のことはない、プレートの境目に近いから「熱かっ」たのであった)、もはや太平洋プレート境界のエネルギーが東海地方沿岸から糸魚川付近にごっそり「抜ける」ことを想定する必要はなくなった。
それゆえ、「小松のモデル」によって日本が「沈む」ことはもうないのである。ああ、よかった。
アイザック・アシモフ亡き後、日本が「沈む」メカニズムの「その後」について、こんだけ大真面目に書いた奴は小松氏御本人以外にはほとんどおるまい。と、チト自慢。

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