Dr Oの生活記録

　朝、喉が痛い…どうやら風邪らしい。熱が出る前兆の背中の不快感もある。これはヤバイと思い、前に病院からもらった飲み残しの薬（本当はアカンらしいが）を飲んで、「帰りにでも病院に行こう」と保険証と現金を多めにもって勤務先へ…。

　今日は新人さんが私の担当部分に入ってきた。（私も新人になるだろうが…）私が１０月３１日で辞めるもんだからそれまでに新人さんを慣れさせておきたいらしい…。私の受け持つ５台の電子ジャーを置く台の内の１台の部分を新人さんにやってもらうことになった。

とりあえずお昼までは風邪の症状を薬が抑えていたらしく、あまり疲れなくて済んだ…一応、昼休み中に薬をまた飲んだんだが…。

　午後３時ごろからしんどくなりはじめた…。しんどくなってイライラすると新人さんがボケッと一瞬でもしてると頭に来てしまうのだ。
　出来あがったものはどんどんラインの下流に送らないと電子ジャーの置く場所が無くなってしまうからである。しかし、新人さんはやっぱり初めてなんでそういうやりくりがあんまり分からんので、出来あがったジャーを置く所があるのだが、そこが空いても自分の手もとの検査の出来たジャーを置かないでじっとしているわけである。
　私が４台担当して新人さんが１台担当であるが、私はイラついているだけに「１台担当なのにぼっとしている余裕はないんだよう」とか思っていた…しかし、まだ「今日が初日なんだから仕方ない」というのがまだ精神では勝っていたのだが…。

しかし午後５時、作業終了までもう少しという所でしんどさが限界にきた…。
　そして、もう私達の担当部分は５台とも埋まっていて、上流の電子ジャーが出来あがって来ているのに、置く場所がない…そして下流の検査が終った製品を置く所は空いている…。新人さんの電子ジャーは検査が終っている…しかしながら、新人さんは前を向いてジッとしている…。移動する準備すらしていない…。

しんどさが限界だっただけに…怒りが急激にガッ！と出てきた…しかし…だ…怒ってはいけない…と自分に言い聞かせたが、ちょっと…ガマンが足らなかった…。
　私は怒りを抑えようと歯を食いしばったが、イライラしすぎて、口の中が血の味がするくらい食いしばってしまった…そして、首のあたりが筋肉を使いすぎて頭がブルブルと痙攣していたんだが…気がついたら…あごを一切開かずに

「作業が遅れますから出来あがったらすぐに次の所に送ってくださいね…」

と、作り笑顔をしながら、あごを一切開かず歯を食いしばりながらしゃべったのである…
新人さんは…「…ハイ…」と返事をしたが、それと同時に私は「しまった！」と思った…

　新人さんより驚いたようだったのが、ここに来てから色々助けてもらってる上流の先輩と下流の先輩である。
　私は普段はあんまりそういう感情を表さないのに、ここに来て私が強烈な顔をして新人さんに話しているのを見て、２人とも
「コイツ、マジでヤバイ！」
という目で私を見ていた。

作業が終ってから、すぐに上流の人が来て
「相当しんどそうなので、掃除はしないでいいのですぐに帰っていただいていいです…」
と私に言ってきた…ラインの責任者の人にも了解を得て私はすぐに病院に向かったのであった…

　今日は指定数量の製品が完成したらそれ以降は棚卸の作業になる日だったらしい…
とりあえず、製品をいつもどおり作った後、はじめての工場での棚卸であった…
　ネジだのすごく小さい部品に関しては計測器があるのだが、鍋だのフタだのは人間が数えるらしい…
　帰ったのは結局いつもより３０分ほど早いだけであった…ちょっとガッカリ…

帰ってくると、総合病院から母が帰ってきていたが、やはり悪性だろうが良性だろうが手術をする可能性があるらしい…
　話によれば３０年前よりやはり技術が発達しているっぽいらしい（当たり前だが…）
とりあえず、まだ検査の結果も出ていないが、今のところ、総合病院の先生も再発であろうと予想しているそうである…まあ、良性腫瘍ならまあ、まだ安心だが…
それでも歯が無くなったら飯も食えなくなるわけだから、腫瘍の除去の他に歯などの治療も必要になりそうだ。

　私は仕事に行くが、母親は仕事が休みなので、父の二七日の読経をしてもらった。
母によると、和尚さんが
「そういえば、宗派は禅宗とお聞きしていますが、ウチの寺でよかったんですかねェ…」
的なことを言ったとか何とか…

　私もいきなり父が死んだのでとりあえずウチは禅宗らしいということでこの知り合いの禅宗の和尚さんにすぐに頼んだんですが…禅宗にも種類があるとか何とか…そんなもん…わたしゃ、わかりませんがな！

うーむ…こんな事いきなり言われてもなぁ…しかし…どうしたモンかなぁ…まあとりあえず親父よ、先祖の宗派とちょっと違うかもしれんが…頑張って天国に行ってくれや。としか言いようが無いなぁ…しかし…

　まあ、私も生きていかなきゃいけないので、金がかかる、母親の治療費もかかる、父親の仏壇とまだ払っていない葬式費用と四十九日法要もやっぱり金がかかる…。
　やっぱり凹んでもいられないので、今日から職場に戻った。
　１週間作業をしていなかったので、忘れていないか不安であったが、どうやら１週間の間を置いた事で体調が良くなったのか、初日とは違って、あまり疲れる事も無かった。

　母親は病気の都合で仕事を辞めるかもしれん。そうなるともっと負担は増える…しかし母親が葬式が終ってから精神状態が多少おかしいので、私が書類だの支払いだのの手続きをおこなったほうがいいようなので、時間の融通がきく仕事場に移ったほうがいいだろう…

　もし仕事に慣れてきたらもう少しこの仕事場に居ようかとか思ったりもしたが、どうやらここは辞めるしかなさそうだな…しかしながら１０月３１日まではしっかり頑張るとしよう…。

　母親が
「下あごがおかしい」
と言い出した…
確かに下あごの左前方部分が歯茎からはれている…

実は母は３０年ほど前に下あごに良性腫瘍が出来て手術をしており、下あごの前歯から右側の奥歯の部分にかけて歯が無い…
そして今回…どうやら残っている部分に良性腫瘍が再発したっぽいと言い出した…
　多分、葬式だのの疲れで免疫力が低下したのだろう…

私は一瞬、動揺した。
親父が死んだ後、すぐに母親が病気になっちまうとは…と…
しかしながら、ちょっと考えて、
「まあ、今までのことを考えると、今更こんなことで凹んでも何にもならんわい」と思い、すぐに楽になった…

　とりあえず母親にかかりつけの歯科医に相談させたら、やはり、再発っぽいとの事…とりあえずもっと大きい病院を紹介しますとかで、大阪の方の総合病院を指定された…。

　まぁ、とりあえず痛くは無いらしいので、とりあえず経過を見ていくことになるだろう。それにしてもまあ色々と起こるもんだ。