時代に取り残された...いや、それは大変失礼な言い方だ。
ポリシーを堅持した結果、この姿が今有る。
名曲喫茶「ライオン」
渋谷道玄坂、東急本店にほど近いが、入り組んだ路地の中にあって探すのに苦労した。

店内は撮影禁止なのでリンクから様子をうかがっていただきたい。
扉を押して中に入るや、廻りの喧噪とはかけ離れた別世界、薄暗く昭和の映画館にタイムスリップしてしまった気分だ。
店内の東(おそらく)壁面は二階まで吹き抜けになったスピーカーシステムが、まるで伽藍の仏像のように鎮座ましましている。
座席はほとんどが、その仏像がごときスピーカーシステムに向いている。
ユニットは左右が非対称、左には右より小さめのウーファーが2基、ホーンの付いた中音域スピーカー、右はウーファー30センチくらいが2基、中音域スコーカー2基(六半のフルレンジかもしれない)あとツイーターが左右上下に二つずつ8基。
入った時にかかっていたのは後期ロマン派の交響曲だったと思うが、私はこの頃の音楽には疎いので曲名(後でアナウンスされたが聴きとれなかった)は解らなかった。
実に静かに鳴っているが力強い。
気がつくと数十分の時間が過ぎていた。こんなに長くロマン派の音楽聴いたことがない。(すぐ飽きてしまう)聴き疲れしない、というのはこういうことだと思った。
家電量販店のオーディオデモなんて五月蝿くて聴かれた物ではない。
そういう製品は一般受けを考えて高音、低音が強調されている。
それに比べたら迫力は無いかもしれない。しかし曲の持つ繊細なディティールは再現出来るか?といったら量販店のオーディオは「No」である。
1925年創業、私の売り上げ伝票の通し番は「5」、午後2時半、珈琲500円.....
渋谷の一等地、商売成り立つのかなあ....
そんな心配はよそにしているかのように、堂々と構え続けている。いつまでも残って欲しい。
国で重要文化財にしていしても良いと思う。

店を出て、足の向くまま坂を下るとこんな風景に出くわした。
もうすぐに取り壊されるのだろう、網が全体にかかっていた。
東京には田舎以上に古い物が残っているのだが、耐震性とか考えたら歴史的特徴がある建物を残して行くのはもう限界なんだろうと思った。
同潤会アパート、移築する財力と場所があったら取り壊す前にマッタを掛けたのに.....

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