出張先へ通勤の車が止めてある駐車場の近くにスリランカ料理の店ができていた。
仕事が終わり夕食をそこでとろうかと店頭のメニューをながめ、しばしどうしようかと考えていた。
ディナーコース1365円は高くもないし、かといってファストフードのように安くもない。
お好みのカレーにナン、サラダ、タンドリーチキン....
決心のつかぬまま目を店内に向けると、スリランカ人のウェイターがもうにっこり笑ってこっちを見てた。
「しょうがないなあ...」と客の居ない店内に入る。
「いらっしゃいまセ」(意外と日本語しっかりしてる)
だが中にはコック、もうひとりのウェイターもスリランカ人で日本人は只ひとりとなると「拉致されるのではないか」なんて恐怖感も少しわき上がった。(失礼......)
さらに「二階へどうゾ」と案内され、狭い螺旋階段を上がって行くと恐怖感はさらに増した。
二階はテーブルが6つほど、壁のクロスが青で、間接照明がまた青ときた。
食物を青く染めると食欲はがたっと落ちる統計がある。
食い物屋でこの色は鬼門だ。恐怖感はピークに達しようとしていた。
やたら愛想のいいのが怪しいウェイターが「これ、サービスでス」とオレンジジュース持ってきた。
ここで緊張はピーク!(「これ飲んだら、それが合図になり拉致される!」と思い込んだ。)
料理を待っている間に別の客が入ってきたので、緊張はかなり解かれた。
カレーは旨かった。ただ、板状のせんべいみたいな物は喰っていいのかイケナイのか解らなかったが緊張の余りか喰ってしまった。味も無く意味不明。
量が多いかなと思ったがすんなり平らげる。
さて、お会計。
やたら愛想がよく日本語の上手いウェイターがレジに立ち1365円支払う。
「これどうゾ」とキャンディーの入った籠を差し出した。
甘い物は苦手なので丁重にお断りすると、「ジャあこレ」と手作りの小さな木彫りの象のキーホルダーが沢山入った籠を差し出した。
お世辞にも可愛いと思えなかったが、「お、カワイイね、一つ貰うよ」と黄色い(金運が着くかな?)象を貰った。
緊張感はいっきに溶け、心の中で「拉致されるなんて失礼を思ってしまった、ごめんなさい」と詫びながら、終止笑顔だったウェイターに「ばいばい」と言って店を出た。
ひょっとしたらこの「象」はトンでもない幸運をもたらしてくれるのではないか、なんて期待して家に帰った。
数日後、グリーンジャンボを買って象を籤に乗せて大当たりを期待したのだったが.....
この象は「余計な心配と、過大な空想は持たないようにしましょう。」という教訓を与えてくれた。


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