BAHCの演奏に関しては「異端」と言われながら「レファレンス」と両極端な評価をされる演奏家。晩年はレコーディングスタジオに籠り、自らの演奏をチェックしながら加工をしたり、最終的な録音に「完璧」を追求した孤高のピアニスト。「演奏会は死んだ。」と言い放ち、録音だけに生涯をささげ、わずか50代の若さで亡くなった。
演奏中に「ふーーーんふ〜〜ん」なんて鼻歌を歌うのでそれまで一緒に録音されている。
夜中、静まり返った中で、彼のCDかけると、その鼻歌が隣の部屋で誰かがしゃべっているように聴こえて不気味。まあ、これが彼のトレードマークみたいなもの。
演奏は何時聴いても「なんて斬新」。真面目に楽譜を追っただけでは絶対表現出来ない。
左手の力強さ!明確に浮かび上がる裏旋律!
ある日本の女性ピアニストが彼を訪れ、「弟子にしてください!」と申し出ても彼はあっさり断った。
彼自身「教えられるものではない。」と解っていたから。
BACHの譜面と、命懸けで対峙した結果の演奏、教えられる訳が無い。
過去、現代の他の演奏家と彼の演奏をブラインドテストしてみれば、おそらく八割以上の確率で誰でも彼の演奏を言い当てる事が出来るはずだ。
それくらい今だに光り輝いている。

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