昭和の日本人の朝の食卓には、味噌汁と漬物が大抵並んでいた。
一人で食事をするようになって6年余になるが、味噌汁も漬物も口にしたいと思ったことがなかった。それが、ふた月ほど前に大根の味噌漬をもらってからその味が忘れられなくなった。会津若松の製造元である。甘い物を食べた後の口直しにもってこいである。
それから何度かスーパーで大根の味噌漬を買ってみたけど、味覚に会わない。通販で購入するほどでもないと考慮していたところ、地元に百年も続く有名なみそ店を思い出した。ネットで検索すると味噌漬がある。
長いこと使っていないモバイルSuicaの残額があるので、駅ビル地下の商店街の支店まで1kmの道を自転車で走った。ビル内は杖を用いたが腰部コルセットを装着しなかったので、痛みが酷い。
店番の初老の男性に「大丈夫ですか」と心配され、駐輪場の年配の警備員に親切にされ、つくづく老いを思い知らされた。
食べたいものを手に入れて、痛みに耐えながら帰宅した。

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