「さて、80000アクセスがあって間が空いてしまいましたが、今年最後の『横沢入の学べるニュウス10』をお送りします。大掃除の手を少し休めて、今年を振り返ってみてはいかがでしょうか。2012年の横沢入、かなり考えさせるニュウスもあったようですね。まずはこちらをご覧下さい。」
「うわっ、なんだか血みたいじゃない」
「これって木からでてるんですか」
「これが今年、横沢入で横行した巻き枯らしゲリラです。といっても『巻き枯らし』をご存じない人も多いかと思いますので、ちょっと解説しましょうか。まず質問ですが、立ち木をマキや材木として使いたかったり、邪魔になったりした時はどうしますか?」
「えーっと、伐り倒す…?」
「そうですよね。普通はチェーンソーなどで伐り倒すわけでこれを『伐採』と呼びます。まぁ、皆さんはもう里山についてお詳しいはずですから、伐採が一概に悪いことと言えないというのはお分かりじゃないんでしょうか。ところが、よく見て下さい、この木はぐるっと幹のまわりに切れ目を入れられているだけで、伐採されていませんよね?」
「でも先生、木は皮のすぐ下に水や養分を通す管があるから、こんなふうに切れ目を入れられたら成長できないんじゃないですか?」
「さすがよくご存じですね。まったくその通りなんです。これでは成長はおろか、生きていくこともできずに枯れてしまいます。木を枯らすために幹を巻くように切れ目を入れることから、『巻き枯らし』と呼ばれるわけですね」
「そんな中途半端なことしはるなんて、なんや生殺しみたいで残酷な気ぃもするんやけど。それにゲリラって何ですねん?こっそりやってはるみたいやないですか。」
「鋭いご指摘ですねー。それではちょっと複雑ですが解説しましょう。横沢入で行なわれている草刈りや湿地の整備といった手入れは、『自然は手つかずのもの』という考えから言えばどれも自然破壊なんですよ。でも、コントロールされた自然破壊を続けることが里山を維持してきたことも間違いないんです。そこで横沢入の手入れを行なっているすべての団体は『横沢入里山管理市民協議会』という場で話し合って、多くの生きものに悪い影響を与えないように、手入れのやり方を決めてきたんですね。」
「じゃ巻き枯らしゲリラはそれを無視したわけ?」
「結果的にはそういうことになりますね。どうしてもこの木を枯らしたいという理由があったんじゃないでしょうか。」
「でも横沢入は東京都の里山保全地域でっしゃろ?だったらそこにある木ぃも都民の財産とちゃいますか?だれや!ワシの財産勝手に伐った奴は!」
「あんたバリバリ関西人じゃないですか」
「だけどなんでこんなルール違反をするんですかねー」
「いい質問ですねー。実は巻き枯らしをした犯人というのは、地元で里山の手入れをしてきた人だったんですよ。」
「え〜〜っ、何で〜?!」
「もちろん犯人の考えは分かりませんが、ルール違反をしても巻き枯らしすることが正しいと考えてしまう思考回路について考えてみるのは、公共の里山を管理するうえでのヒントになるかもしれませんよ。分かりやすくするために、里山の替わりにアイドルグループの例で考えてみましょう。例えばですね、ここにAKT48というグループがあったとします。」
「ちょ、ちょっとAKBはまずいんじゃないですか。」
「いやいや、よく聞いて下さいね。世田谷区の赤堤を拠点としているAKT48ですよ。さて、このアイドルグループは赤堤の商店街や公民館で活動しているとして、ここがあなたの地元だとしたらどうでしょう、応援したくなりませんか?」
「そりゃー地元のアイドルだったら、追っかけもするし後援会にも入っちゃいますよ」
「そうですよねー。そのうち観客が集まるようになったら、会場整理のボランティアまでやっちゃうかもしれませんよね。そして、このグループが苦労の末にとうとう全国デビューを果たしました。ついに武道館でのコンサートです。まったく売れない時から支え続けてきたあなたは嬉しいでしょうね。さて、コンサート会場に行ったあなたは『俺は最初のころからAKT48を支えてきたんだから、タダで入れろ』なんて言いますか?」
「そんなこと言うわけないじゃないですか!確かにみんなのものになっちゃったのは寂しいけど、ちゃんとチケット買って観客席から目の幅涙で見守りますよ」
「さすがファンの鏡ですね。でも、そうでない人もいるわけですよ。これまで横沢入の手入れを続けてきたんだから、ルール違反や公共の財産を損ねて巻き枯らしをしてもかまわないだろう考えるとしたら、この『俺が支えたAKTなんだから俺の主張を認めろ』という考えに共通しませんか?」
「あっ、なるほどー」
「ここは重要なのでぜひ覚えて帰ってもらいたいんですが、こうした考えは公有地となった里山で手入れをするボランティアが、つい陥りやすいとも考えられるんです。つまり、愛着のあまり公有地を自分のものと勘違いしてしまうわけですね。先ほど、関西生まれの方が都民としての権利を主張した時にツッコミが入りましたけど、地元の人間ばかりが発言権があるという考えだと、地元の優遇を主張するファンと同じになってしまわないですか?」
「あほくさ、自分の思い通りにやりたいんなら、自分の土地でやってりゃいいんとちゃいますかー。」
「そうですね。横沢入は都民の貴重な財産なんですから、そこの手入れをする人はたとえボランティアであっても、その管理をすべての都民から任されているという自覚を持って、二度とこうした事件が起きないようにしてもらいたいですね。」
「それでは次のニュウスです。」
「さて、こちらはこの秋から横沢入に登場した炭焼き窯です。実は西多摩自然フォーラムでは何年も前から、横沢入への設置を求めてきたんですね。」
「夢がやっと叶ったわけですね。」
「う〜ん、ところが手放しでは喜べないんですよ。ちょっとこちらをご覧になって下さい。これは小曽木の雑木林で使っている同じタイプの炭焼き窯なんですが、大きさがまったく違って直径は120センチ、一方で横沢入のは180センチあります。」
「でも、大は小を兼ねると言うし…」
「そうとも言えますね。では何が問題かと言うと、この窯で炭を焼くのも市民ボランティアなわけです。当然、活動するのは土日ですから、その間に焼きあがらないと困るでしょう。ところが横沢入の炭焼き窯は、大きくて時間がかかり過ぎ、ボランティアにはたいへん使い勝手が悪いものだったんですね。」
「だれが注文したんですか、そんな窯。」
「いい質問ですね。これはもともと横沢入の管理責任があるはずの東京都が手配したものなんです。実際に使うフォーラムとしてはもっと小さいのを手配してほしかったんですが、あまり話し合いもされないままに決めてしまったようですよ。」
「相変わらずのお役所仕事だなー。」
「実は炭焼き窯だけじゃないんですね。横沢入の尾根が広い範囲で伐採されたのはご存じですか。あの時も都からちゃんと申し送りをしてなかったようで、本来は残すべき木まで業者がみんな伐ってしまいました。伐った木もちゃんと置き場を確保せずに野積みになっていたので、腐ったものもだいぶあるんじゃないでしょうか。都民の税金を使っているんですから、もっとしっかりやってほしいですね。」
「さて、いよいよ残りの時間もわずかになってきました。今年はご覧のように久々にイノシシが現れたり、横沢入にとってあまり有難くない年だったかもしれません。来年は人にとっても生き物にとっても明るい年にしたいですね。では皆さんよいお年を。イケガミアキラではありませんでした。」
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