抱かれたい男NO1とか、結婚したい男NO1とか、世の中にはそーいうNO1がたくさんある。アオキタさんはそーいう点で言えば「親戚にしたい男NO1」だ。
アオキタさんは某雑貨メーカー兼問屋さんの、ウチの担当さんだ。
元々共通の知り合いがいたことと、年がタメだったこともあり、とっても仲良くさせてもらっている。私の、鳴らないケータイの着歴のほとんどがアオキタさんから、と言っても過言ではない。
アオキタさんはその見た目とは裏腹に、とてもマジメな人なのだ。
去年パリ出張で一緒になり、食事をした。その時も、フランス人のアバウトさにとてもご立腹だった。
「なぜヤツらはゴミをポイ捨てするのか」「なぜヤツらは犬のウンコをとらないのか」「なぜヤツらは会計をもっと合理的にできないのか」…。
まわりはすべてフランス人ばかりのカフェで、アオキタさんは「ヤツら」を連呼していた。
いい加減な私はゴミも犬のウンコも大して気にならなかったので、まわりのフランス人の中に日本語を理解する人がいたらどーしよーかと、ビクビクしていたのだが。
そんなマジメなアオキタさんに、以前「私ってば便秘でさ・・」と愚痴ったことがあった。間があいてしまったので、穴埋めに話しただけだったのだが、アオキタさんは真剣に聞いて来た。
「薬とか飲んでます?」
「いやー薬飲む程じゃないっていうか・・」
「ならいいんですけど。聞いた話ですけど、ある女の人が便秘で下剤飲んでたらしいんですよ。で、そのうち下剤って量がだんだん増えてくるじゃないですか、それですっごい量の下剤を飲まないと効かなくなってきたらしいんです」
「う・・うん」
「でも飲まないと出ないから、どんどん飲む。で、更に薬の量が増える、でも出ない・・っていうのが続いて・・」
「・・・・」
「腸の中でカッチカチになっても薬飲み続けて・・それで破裂したらしいですよ。腸が!」
腸が破裂・・。
「下剤のせいで信じられないくらいの量のウンコがたまって、破裂したらしいですよ。だからダメですよ、薬に頼っちゃ!」
うえ〜〜〜ん。
薬飲んでないって言ってるのに〜〜。
ちょっと場つなぎで話した「便秘」の一言で、ウンコで腸破裂!まで話が行くとは思わなかった。
でもそんな人をおどすような話をしているアオキタさんの顔は真剣そのもので、私の腸を本気で心配してくれているのだった。
「わかった。絶対下剤は飲まない」
実直なアオキタさんはやっと安心したようで笑顔を見せてくれた。
ほらね、なんとなくわかるでしょう?
「親戚にしたい男NO1」って。
おとうさん、でもいいかもなー。タメだけど。

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