「マヨミさん(仮名)」でチラリと登場したフトン君ですが、書く書くと言って忘れてました。今日、岩盤浴中にトートツに思い出したので忘れないうちに今回はフトン君の思い出をば……。
フトン君は本名・ヤンケという。イヤ、本名じゃない。当時のあだ名だ。
ホントの本名は忘れてしまった……。
今聞くとヤンケなんてなかなか北欧チックな名前じゃん、と思うのだが、いきさつはこうらしい。
ヤンケの中学で言葉尻に「○○やんけー!」とつけるのが流行ったことがあったらしい。本当に一過性のものだったのだが、ヤンケ少年はいつまでも使い続け、そのうち彼自身が「やんけ」になってしまった。
もう一つの説。
ヤンケ少年と、私服で会うといつもヤッケを着ていたらしい。ナイロンのシャカシャカしたカンジのヤツ、ですね。「アイツはいっつもヤッケだな。」そのうち彼自身が「ヤッケ」となり、のち、ヤンケとなった。
まあどっちでもいいのだが、私と高校時代に知り合った時はすでに「ヤンケ」であった。
ヤンケと私はバンド活動で知り合ったのだが、彼はとてもギターがうまかった。マイケル・シェンカーを完全コピーしていた。(あ、多分わからなくて普通です。一発屋でした。)
違う高校だったので、バンドの練習以外で会うことはめったになかった。
初めてヤンケの家に遊びに行った時に、リビングにフトンが敷いてあったことは前回触れたが、なんやかんやごまかしながら彼の部屋に行くとそこにも当たり前のようにフトンが敷いてあった。フトン地獄でにっこり微笑むヤンケを見て、私は少し冷めた。
私の家がある最寄り駅までヤンケが迎えに来てくれたことがあった。
駅まではずっと下り坂だったので、坂の上から駅前に佇むヤンケらしき姿が見えた。駅に近づくにつれ、私はUターンしたくなった。
ヤンケは制服の上にトレンチコートを着ていたのだった。ベージュのトレンチコートだった。襟をたてていた。肩にはフライングV(ギターの名前ですね。V型してましたね。)がかかっている。タバコもくわえていた。
お前は007か!それとも銭形のとっつぁんか!と突っ込みたいくらいの勇姿ではあったが、一緒に歩くのはご遠慮したかった。
どんなにギターがうまくても、いやだった。
そして極めつけは、私の友達の話をしていた時だった。
バンドのライブに私の友達が来てくれ、ヤンケとも顔見知りになっていた。
「ユカリちゃんは、ひまわりのイメージだな」
とヤンケが言い出した。ひまわりねぇ〜。なんとなくわかる。
「ミユキちゃんは、う〜ん…ウサギかな?」
ウサギ?ああ、前歯がでかいから?
じゃあ私は??どんなイメージ??
「リリちゃんは〜…コ・タ・ツ!」
は?聞き間違いですか??今、コタツって言った??
「……なんで?」
「なんとなく!ボクのコタツ!」
このボケ〜ッ!なーにがボクのコタツじゃ〜〜!!
ひまわり、ウサギ、ときて、なんでコタツだぁ〜〜!!
高校生の私にはまったく理解できず、フトン、トレンチコート、コタツの3点セットで私とヤンケのつきあいは終止符を打った。
今思い出してもムネがキューンと……もしない、苦い思い出だ。

0