ワタナベの持病がでた。背骨に沿って湿疹ができるのだ。アレルギーの一種で体重が増加するとできる。湿疹ができると痒いらしく自分でガジガジと噛んで毛をブチブチ引き抜いてしまう。
今、ワタナベの背中はウスラハゲになっている。
あまりに痛々しいので、薬をもらいに行くことにした。
主治医であるトン先生はウチの犬猫たちすべて診てもらっている。
つきあいももう20年になるのだが、トシを重ねるごとに若くなっている。
妖怪だ。
トン先生の病院も、ウチと同じく2回程移転しているのだが、移るたびにバージョンアップしている。今なんて待合室の家具はすべてカルテル、小物はアレッシー、とセレブゥ〜な雰囲気満載になっている。
ハコだけではなく、受付のおねえさんと看護士のおねえさんもセレブ〜な方々だ。普通なら、どうなん?と思われそうなのだが、トン先生の腕の確かさはそんなもんぶっとばす程なのだ。
ワタナベは年一回受けるべきワクチンを受けていない。年齢的に考えて通院のストレスが大きいからだ。先生と相談した結果、完全室内飼いであることと他の動物との接触がないことから受けないことにしたのだ。
ワクチンを受けていないということは病院にイケナイということだ。
他の看畜から病気を移される可能性が高いからだ。
なので、飼い主である私が目を皿のようにして毎日観察していないといけない。そして少しでも気になることがあれば即先生に相談だ。
「目やにが出ます」
「毛玉をしょっちゅう吐きます」
「ブツブツが出ました」
「口が臭いです」
「歯が抜けました」
療養食を買いに月に一度、私は病院に行く。
待合室で犬も猫も連れていないのは私だけだ。
受付のおねえさんは移転後からの人なので、ワタナベを見たことがない。
多分病院では「幻の猫」と言われているであろう。
幻のデブ猫だ。イヤ、幻のかわいく賢いデブ猫だ。
ワタナベが今も元気なのはトン先生の的確な遠隔診察のおかげだ。
今回も無事薬をもらって湿疹も治まることだろう。
今後トン先生とワタナベが顔をあわせる時があるとすれば、それはワタナベの最期の時になるかもしれない。
トン先生に看取ってもらうのがウチの犬猫のならわしだ。
できれば私の最期も看取って頂きたいくらいだが、それは無理というものか。
画像は、薬を不安げに見るワタナベ。


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