私は古い建物が大好きだ。海外に行くと、必ず教会チェックをする。お祈りをしている人たちにまぎれて、ボーッと天井を見上げたりあちこちのぞいたりする。
海外では教会だが、国内になるとお寺だ。
前回の「ノーガード戦法」で登場した、女子高生時代に大口を開けて爆睡した満員電車は、岩手県の平泉に向かう線だったっちゅーくらい年期の入った寺好きなのだ。
平泉といえば、源義経がかくまわれていたという中尊寺があるのだよ。
夏草や つわものどもが 夢の跡
ですわ。あ、ちがう?
五月雨の降り残してや 光堂
こっち?…ごめん、芭蕉。
松尾芭蕉と同じ場所に立ったんですよ?胸がキューンとしますよ。
……しませんか?
そんな寺好きな私だが、城まではまだ触手を伸ばしていなかった。
城ってちょっと……ト、思っていたのだ。
今回、名古屋城に行くまでは。
休みにたまたま通りかかった名古屋城。満開を過ぎ、少し散り始めた桜がとてもキレイで、時間もそんなになかったのに無理矢理寄ってみたのだった。
名古屋城といえば、すぐ横の愛知県体育館にはよく来たものだ。
RC、YMO、新日、お相撲、新日、お相撲、お相撲、そしてお相撲。
そんな思い出の県体の横を抜け、城内へ。
平日なのに人がわんさかいる。年配の人ばかりかと思いきや、若い人が多い。
城と桜をバックに、自分撮りをするお若いカップルの方々。
賭けてもいい。絶対、城なんて写ってないって。多分桜も。
城ってキミが思ってるよりデカイよ。
そして売店。
とりあえず土産でも買うか。……土産??ナゴヤの??ト、少し腑に落ちない気持ちもあったが、まあいい。
キンピカの名古屋城、キンピカのシャチホコ、徳川将軍ゆのみ……おそろしい王道の品揃え。
なんか笑えるヤツないかな……と探していると、おねえさんの声がした。
ビックリするくらい細いヒールのブーツと超ミニのデニムスカート、丈短のジャケットを着たおねえさんたちだった。
「根付、はやってるじゃーん」
んん?根付?……『流行ってる』???!
「あーうんうん!みんな集めてるよねー、根付」
ハァ??マジで??集めてんの?根付?みんな??
根付だよね?みんなってどこのみんなだよ?!
こいつらホントに根付ってわかってんの?と思い、彼女らの方を見ると確かに、シャチホコ根付とかシャチホコキティちゃん根付とかエビフライキティちゃん根付とかを選んでいるようだった。
「コレ、なにげにかわいいけど、かわいいだけ〜ってカンジだよね〜」
「ウンウン。ある意味かわいいけどさぁ〜、それだけぇ?ってカンジある」
……君らは根付にナニを求めているのだ?
それもほとんど、キティちゃん根付じゃないか。かわいい以上のナニを……。
あ、根付をご存じない方。
根付ってのは、江戸時代に印籠とか煙草入れとかを留めるためにつけた飾りみたいなやつです。
多分今なら、ストラップみたいなカンジでしょうか?
根付を熱く選んでいる彼女たちに負け、早々に売店を出た。
ホントにみんな集めてんのか?根付。
知らんぞ、ワシ。
みたらし団子を食べ、城と桜を愛で、久しぶりにお花見気分を味わえた時間だった。
やっぱこれからは城か?
あ、ちがう。城と根付だわ。
画像は、人気バクハツ!名古屋城。
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