正月休み用に買い込んだノンフィクション小説。幕末で活躍する人達のものすごいエネルギー。その人達が幕末という幕藩体制の中で、どのように飛び出し、どのように活躍したのか。すごい関心があります。
以前は新政府軍の英雄たち、脇役たちを中心に読みあさりましたが、今回のノンフィクションは、幕府側の人材を中心に描かれています。
清国が海外列強に侵略され、その情報は徳川幕府にも伝わります。攘夷意識が沸騰します。
雄藩の薩摩や長州が、その列強と戦争を始めます。ところが、武器の差は歴然。攘夷の先頭を走るはずだったその雄藩が、攘夷を密かに止め、列強と交易を始めます。
打倒幕府です。列強に対する幕府体制の混乱ぶりは、大変なものです。慌てふためく幕府の幹部達の中にあって、下級官吏から列強との折衝に上り詰めていく人物が描かれています。
延々と続く「事なかれ」「先延ばし」が議論のが中心にあって、その中でも異彩を放つ主人公。負け戦の中で、孤軍奮闘する田辺太一です。
パリでの博覧会も実行しましたが、薩摩藩に邪魔され、失敗に終わります。そのパリでの博覧会参加そのものが、列強との折衝を「先延ばし」するための方便なのです。今に続く日本政治の根幹です。
新政府軍に倒されるその状況描写が、学びそのものです。負け戦という中で、どのように耐えながら自分の意志を貫いていくか。
小さな「私」を見つめるようなノンフィクションでありました。読み終えて、大きく息をつきましたね。

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