
「君主論」 マキァヴェッリ著,池田廉訳(筑摩書房)。
マキャヴェッリ全集で読みました。中公文庫版と訳者は同じで,新訳との異同はチェックしていません。
実際に読んでみるとそれまで本書に対して抱いていたイメージとの乖離を感じる一冊。意外に普通の内容(もちろん全滅作戦のような記載はありますが,可能な時代と不可能な時代とを判別するなら普遍性を有します。)。
その論述のスタイルは対話を重ねるようであり,金科玉条のように読むというよりは,そうかもねーとか,まあ時代的にはそうかもなーとかいろいろと考えさせてくれます。
マキアヴェリを読むと,自衛のための軍隊とすれば自国軍が基本で,現在のような米軍の庇護下にある日本というのはやっぱりおかしいことなんだろうなと改めて思います。戦力の均衡という意味では一定の役割を果たしたのでしょうが,結果としては,中途半端な状態を生んでいます。
普天間の問題なんかを考えるにつけても,移設ではなく,米軍の撤退こそが重要であって,そこに空白が生じるということであれば,自衛隊の配置を変えるなどして対応していくことが国益に資するのだろうなと思います(現実的な可能性は抜きにしても)。
「君主は必要やむをえない場合のほか,自分より強力な者と手を組んで,第三者に攻撃をしかけないことだ。その理由は,勝利を収めても,その者の虜囚になってしまうからだ。」(全集,76頁)
日本の今置かれている難しい立場を考えるなら,その指摘の正しさを否定することはできませんね。
また,民主制国家であって,自由に慣れ親しんでいる国は統治が困難という指摘も逆から考えると,自由かつ民主的な体制の整備が(もちろん軍制のあり方も影響するとは思いますが),侵略に対する一定の防御機能を果たすということを示しています。
しかし,昔の戦争を通して現在の戦争ないし防衛のあり方を考えると,防衛観に対する変わらない考え方に対して,国際情勢や最近の紛争の結果なども含めた新たな分析の必要を感じますね。

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