「コルタサル短篇集 悪魔の涎・追い求める男 他八篇」
読書

「悪魔の涎・追い求める男 他八篇」フリオ・コルタサル著,木村榮一訳(岩波文庫)。
ラテンアメリカ文学は,魅力的な分野の一つですね。こちらは,フリオ・コルタサルの短篇集。幻想的と表現されると手を出していいのかどうか迷うのですが,むしろポーの伝統に則った正統派短篇集とみるべきでしょう。
「続いている公園」
ほんの2ページほどの短編。あちらから,こちらへ。
「パリにいる若い女性に宛てた手紙」
若い女性の不在の間に部屋を借りることになったが,男には,ウサギを吐き出す奇癖が・・。
「占拠された屋敷」
兄と妹の暮らす家は,次第に何者かに占拠されていく。
「夜,あおむけにされて」
夢と現実。空間を越えているのか?まあ,言ってみればSFだね。
「悪魔の涎」
写真を撮ろうとやってきた男,ベンチには女と年下の少年がいて・・。
この短篇集で言うとここまでが,幻想色がかなり強い印象。
「追い求める男」
サックスでジャズ界に異風を巻き起こす,ジョニー。そして,彼の伝記を書き,ベストセラーになっている主人公の評論家。圧倒的な迫力で描く,ジャズ短編。
「南部高速道路」
とてつもない渋滞に巻きこまれた高速道路。非日常は,日常にと変わっていく。
こちらの筆力もすごいですね。
「正午の島」
飛行機から見えるあの島。ついに島を訪れることにした主人公は・・。
結末は,ちょっとあんまりではないかと思うけれど。
「ジョン・ハウエルへの指示」
演劇を見に来たはずなのに,なぜか出演させられる羽目に。そこには,奇妙な謎が・・
「すべての火は火」
ローマの円形闘技場と現代の男女の修羅場。二つの時空は混ざり合い,短編を紡ぐ。実験的な作品ですが,興味深い作品になりました。
電話の混線具合も含めて,独特の印象を残します。

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