「世界の文学セレクション36 チェーホフ」 チェーホフ著,神西清ら訳(中央公論社)。
チェーホフを読みたいと思っていたのですが,いろいろと入っているこちらを選びました。本書には,戯曲4つに,短中編小説が14篇収録されています。
最初の4つは戯曲になります。
「かもめ」
戯曲中劇からスタートする本作は,女優の息子で作家を目指すトレープレフくんが,恋するニーナを母親の愛人に奪われてしまうという展開。ニーナは女優を目指すのだけれど,結局立場は逆転する。悔いの残る人生というものが劇中に滲み出る。
「ワーニャ伯父さん」
タイトルからは,少年が伯父さんとの日々を回想するといった牧歌的なイメージを持っていましたが,伯父さんはもっと若々しい。大学教授の先妻の兄であるワーニャが,教授の後妻に思いを寄せる。こちらも失われた日々に対する悔恨といった色彩が強い。
「三人姉妹」
3人姉妹(もう一人男の兄弟もいるので,本当は4人なのだが)を描く。夢に見たモスクワからはかなり離れた田舎町にとどまる日々。貴族階級の没落のようなものが描かれています。労働についての記載なんかも時代を感じさせられます。
年老いた召使いに対する対応の違いなど,時代の変化を意識させるシーンが多く見られます。大火事に町が襲われるシーンも印象的。
「桜の園」
学校の話か何かかと思うのですが,リアルに桜園の売却にともなう話でした。こちらも落ちぶれた女領主をめぐる話で,不動産が競売にかけられています。副題は喜劇と銘打たれているのですが,色彩は悲劇という感じですね。戯曲では,いずれも時代の変化というものが色濃く描かれています。
この4つの戯曲の後は,小説が続きます。
(つづく)

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