
「すべては雪に消える」 A・D・ミラー著,北野寿美枝訳(ハヤカワ文庫)。小説。
イギリスからロシアへと転身した勤務弁護士を主人公にしたサスペンス(厳密にはサスペンスというよりは小説だが)。ロシアの地下鉄で,姉妹と思われる女性に出会う。姉の方に恋心を寄せる主人公は次第に女性と親密な関係になっていく。
婚約者に昔のことを語るという文体で描かれる。うーん,どうなんだろう。こんな話を聞かされるっていうのは。
年齢的に見ても女性は,きっと自分を騙す考えなんだろうという予感を持っている主人公。分かっていても,惹かれてしまう。いい夢見させてくれたなー,的な感じなんでしょうかね。
舞台は,ソ連崩壊後のロシアなので,自由主義経済の影がいろいろなところに滲み出ています。主人公は弁護士として,銀行団の融資手続きのための契約書の準備などの作業に従事しています。おばさんであると紹介された女性が持つ不動産を手放して,郊外に建設中のマンションの一室と交換するという話に主人公は関与させられます。
様々な詐欺話の飛び交うロシア,っていう感じの話です。主人公は,そういった部分も含めてロシアにしっくり来てしまっています。なので,騙す人たちに対する視線も温かです。内容的には,もう少しひねりが欲しい印象でした。

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