![スマイルBEST ツォツィ スタンダード・エディション [DVD]](http://ecx.images-amazon.com/images/I/51a3pjigtNL._SL160_.jpg)
「ツォツィ」 ギャヴィン・フッド監督,プレスリー・チュエニヤハエ,テリー・ベート出演(2005,イギリス,南アフリカ)。映画。
2006年アカデミー賞外国語映画賞受賞作品。タイトルは主人公のあだ名で,不良という意味らしい。スラム街出身の若者は,4人で組んで強盗をしながら生活している。ちんぴらよりも素行は悪く。殺人も厭わないところがある。
主人公の生い立ちには不幸なものがあり,それが今の彼の冷徹さに影響しているということを映画は匂わせる。
仲間といざこざがあった後,車を奪いに高級住宅街に向かった彼は,女性に発砲して車を奪う。しかし,車内には赤ん坊がいた。彼は,赤ん坊を連れてきてしまう。
不良と赤ちゃんという,いかにもな取り合わせだけれど,単に感動を狙いましたといった安易な作りにしていない。そもそも主人公は完全に道を踏み外していて,最初は感情移入がしにくいキャラクターといえます。
そんな彼が,不器用ながら彼なりの生き直しをしたいと考える。子どもはおもちゃではないけれど,彼が子どもを大事に思う気持ちはおもちゃを愛でるような感覚だ。とはいえ,その心の動きに目を向けさせられる我々はいろんなことを考えさせられる。
子どもを誘拐した家に入って,さらに強盗をするということも普通に考えると信じられない行為なんだけれど,自分の生い立ちと重ね合わせた富裕層に対する一種の憤怒の現れでもあるのでしょう。子どもに乳を与えるためだけに,ピストルで脅された寡婦である少女との交流も彼の心に影響を与えます。
こういう映画ならではのラスト(華々しく銃撃を受けて死ぬ)とは違った,エンディングもなかなか印象深い。
どんな人間であっても,誰にでも少しばかりは,いい思い出がある。それが人をつなぎ止めるものになる。そんなメッセージを感じた,良作。

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