
「水域」 漆原友紀著(講談社)。マンガ。
上下2冊。水泳部に所属する千波は,練習中に気を失い,川の中に自分を見出す。その後も意識を失っては,川のある村にやってくる。ここは一体どこなのか。
ダムに沈んだ村とその村で生活していた家族。龍神伝説のある,村の滝壺。
よい話でした。世代を超えた想いというものをうまくリンクさせています。
千波の母親和澄の少女時代,ダム建設の話が降って湧いてきて,親たちが揉め始めた時,兄の思い出が浮かんで涙に濡れながら寝入ってしまうシーンが上巻の終わり頃にあるのですが,あー分かるなーと思う。また,千波の祖母である清子らがダム建設に伴い,夫を残して一足先に移動するシーンも様々に涙を誘います。
翻案したダムは不明ですが,作中人物の会話はきっと広島弁ですね。ダム自体に対する批判的視点は乏しく,どちらかというと情緒的な面をクローズアップしていますが,まあこれはこれでやむを得ないでしょう。
そういう面も期待されている方にはやや拍子抜けかも。
冬に読むと,夏が恋しくなる一冊。

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