
「自殺の心理学」 高橋祥友著(講談社現代新書)。
自殺問題に取り組んできた精神科医が自殺をめぐる心理について平易に説明した一冊。1997年初版なので,数値はやや古いですが,内容的には古くなっていません。
第1章 なぜ人は自殺するか
第2章 青少年の自殺
第3章 中年の自殺
第4章 高齢者の自殺
第5章 治療の方法
で構成されています。
本書では,青少年の自殺に多くのページが割かれています。青少年の自殺における対応方法やマスコミ対応についても紹介がなされています。
個人的には,高齢者の自殺におけるうつ病の看過についてはなるほどと思わされました。高齢者の自殺では病苦が上位に位置づけられますが,そんな単純なものじゃないよなーとあらためて思い知らされます。
自殺対策基本法は本書の刊行された随分後である2006年に成立しています。基本法制定後の自殺対策への最近の取組を思うにつれ,まだまだ不十分とはいえ,大きな転換をもたらしているなと思います。やはり政策課題として掲げていくことの効果っていうのは大きいな,と。そして,そういう政策転換への基礎的な発想が本書なんかの自殺問題に対する認識にある訳です。

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