「検事補カープの怒り」 ロバート・K・タネンボーム著,長野きよみ訳(二見文庫)。
新任の検事補であるロジャー・カープを主人公にするサスペンス。検察官を主人公にするミステリーって,微妙なことが多い。今回も「カープの怒り」と来た訳なので,司法制度批判のような感じなのかなと思って読み始めましたが,そんなことはなく,ほどほどの仕上がりでした。
正義感の強い新任検事補のカープの活躍を描きます。強盗殺人事件の犯人であり,奸智に長けたマンデヴィル・ルイスは,数々の拳銃強盗を犯しながら,ヤク中の者に罪を着せ逃れてきた。しかし,彼は普段は使わない共犯者(弟子)を使ったことにより,共犯者のミスにより捕まってしまう。
もとより服役する気持ちのないルイスは精神病を装って,刑事裁判を切り抜ける。しかし,カープは彼の詐病を見抜く。
ルイスの事件を縦糸にしながら,新任検事補としての青春物の雰囲気を横糸に織り込んで描く。若者ゆえの破天荒さは,この作品を学園物みたいな雰囲気にしています。検察庁内の政治状況なんかも描かれていて興味深い。
カープを主人公にした続編も出版されていて,邦訳だと本作のほかに2作出ています。家の書庫を探すと続刊もある。あー,積ん読生活から脱却したいな。

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