
「だれが海辺で気ままに花火を上げるのか」 金愛爛(キム・エラン)著,きむふな訳(トランスビュー)。
久々にラジオをかけながら運転していたら,NHKラジオの「レベルアップハングル講座」で,韓国の女性作家3名の作品を紹介する放送を流していた。もちろん,ハングルの勉強は中断したままなので,朗読を聞いてもさっぱり分からなかったものの,強く関心を惹かれてまずは日本語で読んでみようと思った。
本書は,中でも一番若い作家(1980年生まれ)のもので,「いまは静かな時−韓国現代文学選集−」に入っている。この選集は,短篇で構成されており,一冊づつの分売も可能。一冊だと420円だけれど,全部読むつもりならセットで買った方が安い。
重複になるけれど,面白かったのでセットで買うことになりそうだ。
33頁の短篇で,父と子の姿がコミカルに描かれる。父子家庭の僕は,父に初めてふぐ鍋を食べに連れて行ってもらうが,父はふぐには毒があるから今夜は寝てはいけないという。外には台風が近付いてきており,僕は,父にどうやって生まれたのかを聞く。
韓国の映画やドラマを見ても感じるところだけれど,ぼくは,その素朴さと気取らなさに感じ入ることが多い。この短篇もそういった雰囲気がよく出ている。肩のこらない作品です。
こういうプロジェクトは貴重だと思います。各国にはそれぞれ優れた作家がいるというのは,当たり前の話であって,それだけ楽しみもたくさんあると言えますが,何でも知りたいと思う向きの自分にとっては,このペースで全世界に優れた作品があるとすると,砂漠の砂を数えるのにも似た猛烈な読書力(読書量)が必要とされる訳で(前提として邦訳されることが不可欠ですが),進むべき道がはるかに続くさまに目眩を感じるのであった。
・・・なんていいましたが,10分ほどで読めてしまうので,実は手っ取り早く著者の雰囲気を知るには,効率的だったりします。でも,分冊にしないで短篇集として売り出しても良かったんじゃないかな,と思いました。

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