

「ペコロスの母に会いに行く」 岡野雄一著(西日本新聞社)。マンガ。
本のサイズは少し大きめ。長崎のタウン誌などに連載されたものを選別の上,一冊にまとめたもの。エッセイも収録されている。
認知症となり施設に入っている母と62歳の息子との日々を,4コママンガ風のスタイルで描いている。
最初は,きっとコメディの色が強いのだろうと思ったけれど,そういう期待は裏切られて静かな生活が描かれていく。
もちろん笑いもあるのだけれど,どちらかというとほのぼのしている。
中盤あたりから,母子の過去が混在一体となって泣ける話が増えてくる。こんな感じで認知症になれるのなら本望だろうなーと思うけれど,実際にはなかなかこうはいかないだろう。やっぱりそのためには普段から精進しなければなるまいね,と思います。
長崎弁も散りばめられているので,長崎弁を解する人にはよりディープに楽しむことができると思います。ぼくは一度旅行に行ったくらいだから,方言の方はさっぱりなのだけれど,あの町の坂道の多い街並みは確かに印象深い。
ぼくらが生活を送る上で,最も貴重な時間というのはどういう時間の過ごし方なんだろうということを考えさせてくれる。その時が来る前に,多くの貴重な時間を温めておくことが必要だなとあらためて思い出させてくれる静かな余韻に溢れた一冊。

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