刑法には,住居侵入罪という罪が規定されているのですが,イラク問題に関するビラを配るために自衛隊の官舎に立ち入ったことが,管理者の意思に反するとして,住居侵入罪で逮捕した事件(立川自衛官舎ビラ事件)について,12月16日に東京地裁八王子支部が無罪判決を言い渡した。
検察は控訴したようで,今後の判断に注目したい。
この事件につき,憲法学者や市民団体の人たちは,おおむね表現行為に対する不当な弾圧であると批判し,判決を支持している。
これに対し,小倉弁護士は,私的領域で政治的な表現をされないという利益も保護されるのではないかという意見を公表している。
http://blog.goo.ne.jp/hwj-ogura/
(12月22日,23日のブログ。)
この見解は,表現の自由を考える上で貴重な材料になる。
物事を多角的に検証するためには,時には喉元にぐさっと刺さるような見解についても嫌がらずに検討する必要がある。
このようなプロセスによって,物事の本質がより明らかになる場合が多い。
さて,ぱっと考えると,自分が嫌なビラが継続的に自分の郵便受けに入れられるようなことがあれば,やはり面白くないだろうと思う。
例えば,ぼくの場合であれば,教育基本法の改正に反対であるけれど,教育基本法を改正すべきだという意見のビラが来れば,やめろーいと思うかもしれない。
彼の言う私的領域で政治的な表現をされない自由(プライバシーの自由に類似すると見るべきか)は,一見すると共感を得そうにも思える。
しかし,民主主義の社会においては,表現の価値というのは,根幹である。情報がなければ,主権者として判断することもできないし,対話の可能性がなければ,そもそも国としての存在があり得ない。
そういう観点から考えると,本件のビラ配布という表現行為は,デモ行進などの表現行為に比べ穏当な方法といえるし,受け取った側の不利益としても単に読まないで捨てれば足りる話である。
(つづく)

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