
「護憲派のための軍事入門」
山田朗著(花伝社,2005)。
前に憲法の話をする機会が与えられたため,憲法関係の本を読んだことがあったけれど,再びそれに近い機会が回ってきた。今回は,軍事関係と憲法との関係に関して,文献等を調べてねん,ということ。
ということで,プラトンの「法律」は後に回して,まずは本書を読みました。
現在の自衛隊の姿をつかむための入門的な一冊。冒頭,軍事を知ることはガンの研究をするのと同じことだと述べます。確かに,ガンを研究する人がガンを好きということはないですよね。
平和のための軍事研究は今後日本では重要な地位を占めてくるのではないかと思います。そういう意味では,軍縮地球市民は,よいところに目をつけたと思います。
軍事面の分析のために,@物的資源(生産力・技術力・輸送力),A人的資源(人材養成),B資金(戦費)の視点を挙げています。
資金面でいえば日本も日露戦争の遂行のためには国債を米英に引き受けてもらう必要がありました。つまり,ある程度の経済力がなければ戦争の遂行は困難な訳です。
本書では,自衛隊の軍備の拡張が正面から議論されないまま,軍備の更新に合わせて密かにその質を変えていったことを指摘しています。結果として,その後の防衛計画や条約等は現実を追認していくという性格を有したに過ぎないことになりました。こういう事態は,まさに自衛隊(政府)の民主的コントロールの軽視にほかなりません。
こういう実態を知れば知るほど,憲法改正したとして果たして軍備をコントロールできるのか,という疑問が生じてきます。
個人的に衝撃を受けたのは,自衛隊の戦力の大きさ。憲法改正論者は,9条では国を守れないとか,米軍に守ってもらっているのだ,などとよく主張していますが,実際には在日米軍の兵力と自衛隊の兵力を比べると圧倒的に自衛隊の方が優位に立っています。
そりゃ当たり前ですよね。在日米軍は基本的に先遣隊な訳です。日本が侵略されるような事態になった場合には,安保条約のもとでもまず防衛するのは自衛隊なのです。そして,そのために必要な装備を十分に持っている訳です(これは,冷戦構造のもとで日本を防波堤にしようとした戦略の隠れたる成果です。)。
そういう意味では,国土を守るために十分すぎる軍備はすでに有している訳で,米軍の駐留は必要ない訳です。
これに対して,米軍は自国の戦略のために自衛隊を利用したいと考え始めているというのが真実です。これは,自衛隊を国土防衛から引っ張り出す行為な訳です。うちの箱入り娘を世界中連れ回したいということなので,えらく迷惑な話です。
本書では,日米安保を解消して,アジアの軍拡を防ぐために日本が軍縮に取り組むことを提案しています。
さて,今日のまとめ。安保がなければ日本が守れない,日本は米軍に助けてもらったからこそ平和でいられたのだという議論はオオウソ!
すでに日本の自衛隊だけでも国土防衛ができる状態なので,むしろ戦力を国土防衛に特化して,スリムにしていくことが望まれているということ。

0