安倍晋三氏の2005年10月25日のAEI主催の会議におけるスピーチの話を続けます。
彼は,国民世論が変わったのは,9.11テロと拉致問題だ指摘しています。これによって安全保障についての議論がしやすくなった,と。つまり,拉致問題についても政策形成の目的のために利用されているという側面があるわけです。
彼は,日本国憲法の前文は周辺国の善意に期待した現実性のない規定だと,現憲法に対する無理解ぶりをさらします。
また,米軍の存在についての認識も変わってきているとして,キティ・ホークが横須賀を離れた際に,リベラルな立場である某新聞社が日本は大丈夫ですかと不安そうに聞いてきたと述べています。
何十年もチャンスがなかったけれど,北朝鮮のおかげで状況は変わってきている,とまで言っちゃいます。
そして,MDの予算化も成功し,安全保障について議論しやすくなっているとし,集団的自衛権や憲法改正も俎上にのせるべきだ。現状では同盟国を助けることもできないと述べます。
ついには,日本が極東での抑止力になり,主導になって地域の安定を図りたいとまで述べ,こんなことを言ったら10年前だったら辞めなきゃならなかっただろうけど,とまでいいます。で,国民も安全保障をもっと議論し,もっと認識してもらいたいよねーと終わる訳です。
いやー,すごいね。同盟に対する盲目的な信頼と自国の憲法,戦後の歩んできた自国の歴史への侮蔑的な態度。加えて,その深みのない分析と言動。実は,これこそが平和ボケなんですが,自覚していないでしょうね。
で,その分析があまりにもお粗末であることは,主催者側であるAEIのレジデント・フェローであるダン・ブルーメンソールのアジア概況(上記の講演録などのリンクのところにある)を読むとよく分かります。
(つづく)

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