「16歳の合衆国」
マシュー・ライアン・ホーグ監督,ライアン・ゴズリング,ジェナ・マローン,ドン・チードル,ケヴィン・スペイシー出演(アメリカ,2002)。
作家の息子である16歳の少年リーランドが元交際相手の知的障害を持つ弟を殺してしまう。そのリーランドの心を彼が入所する矯正施設の教官パールが探っていく。彼パールはといえば,これを元に本を書きたいと思っている,彼は売れない作家でもあるのだ。これに元交際相手の家庭の事情も絡んで,皆それぞれに悩みを抱えていることが明らかになってくる。
評価の分かれる作品でしょうね。少年の心をテーマにしたという意味では意欲的な作品で,監督が自らの矯正施設教官経験を踏まえて,脚本を書いたようです。
元彼女もドラッグに溺れていたりとアメリカ的な病理が浮き彫りにはされていますが,やや狙った感が残る映画になった気がしました。
まず,音楽。いかにもおしゃれ,青春物ぶりをアピールして,なんだか雰囲気先行の気がしちゃいます。
主人公の少年は,一瞬の幸せの先にある不幸が見えてしまってあと一歩を踏み出せないという,ある種悲観,諦観した世界観を持っています。まあ,確かに少年時代なんてそんなものです。しかし,その先の彼の描き方がもう少し。
そういう世界観を持つ割には,なんか中途半端なんですよね。変に前向きなところがあったりして,人格の表現に矛盾を感じちゃいました。もちろん,人は矛盾が多いんですが,そういうのとは違って,絶対ここでこんな風に迫ったりしないだろうとか,ああいう行動を取るなら,違った意味で冷めているんじゃないかとか(これは性的な部分ね),というリアリティーのなさを感じてしまった。
そういう意味では,ややプロモーションを意識した作りになっていて,作り物的な空気を感じさせられました。また,殺人の理由もなんだか小難しく解釈しちゃったなーってな感じ。これは結局一方的な押しつけを普遍的な人生観のように誤解して行った犯行と評価できるけれど,裏返せばその真意には思わぬ方向に跳ね返った彼女への憎悪があったのではないか(彼は否定するけれど),そして結果として自分が悲劇へのパズルでいうところの1ピースになってしまった。つまり,諦観のつもりが積極的にはまってしまった。
とはいえ,16歳の気持ちがそんな風にすっきりと整理できたら,こういう問題は起きなかったし,それは既に10代を卒業したということでもある。そういう未熟な心の動きを表現したと考えれば,まあそこそこの映画なのでしょう。

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