「無意識の証人」 ジャンリーコ・カロフィーリオ著,石橋典子訳(文春文庫)。サスペンス小説。
以前に読んだ,
「目を閉じて」の前作にあたる作品。「目を閉じて」がそこそこの出来だったので,本書も読んで見ました。
海辺の町で9歳の少年が殺され,容疑者としてアフリカ出身の若者が逮捕される。グイードは,被告の弁護を引き受ける。
グイードの私生活がようやっと分かりました。そういう意味では,一作目から読んだ方が良かったでしょうね。本書も2作目同様,それほど深い謎が隠されている訳ではなく,殺人事件の弁護すら彼の日常の一こまという感じがします。
38歳で妻に離婚を切り出され,絶望に暮れるグイード。ショックのあまりパニック症状を起こしてしまうようになってしまいます。そういう彼の魂の再生の物語でもあります。
地味な作品だけど,実務家が書いただけあって,法廷シーン等はリアリティーがあります。イタリアの法廷も今後日本で導入される裁判員制度に近い参審制をとり,その構成は裁判官2名に,一般人が6名。
グイードは,皮肉な反骨家といった感じで,結構あれこれとうるさいです。マニュアル通りの尋問(答えを予想できない質問をするな)には異議を唱えます。まあ,そうですよね。裁判は生き物で,事件も様々ですから。
本書では,
「目撃証言」で見たような,目撃証言の信用性がキーになります。タイトルもそのことを示していますよね。本国では,グイードを主人公にしている3作目も出版されているようなので,日本でも早く翻訳されるといいですね。

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