「政治学」 アリストテレス著,牛田徳子訳(京都大学学術出版会西洋古典叢書)。
最近,あまり本のレビューをしていなかったけれど,それは本を読まなくなったからではなく,骨太の本書のレビューをするには,かなりのエネルギーがいるからなかなか踏ん切りがつかなかったというのが大きな理由です。
プラトンは,あらかた読んだので,今度はアリストテレスということで,読み始めましたが,これはかなり面白かったです。特に前半。
もちろん割り引いて読まなくてはいけない部分も多いですが(女性の権利なんかについてはまったくだめ),紀元前に書かれた本なのですから,それくらいは許してあげましょう。
しかし,紀元前に政治学ですよ。あきれてしまいますね。加えて彼の方法論もなかなか斬新ですし,何より全てはそこにあった,と言ってしまっていいほどの素材の宝庫ですね。
「自然は無駄なものはなにも造らない」(10頁)。だからこそ,自然をモチーフにして考察を進めていきます。
この真理は,今に至るまで発見されることはあれども,否定されることはあまりないですよね。
さて,彼の文章を読んでいく上での注意点ですが,価値中立的に読んでいくことが必要であるということが言えるだろうと思います。たとえば,
「支配と被支配は,(人間にとって)たんに欠くことできないばかりか,また有益なことでもある。」(15頁)
この文章なんかは,自由を求めて戦ってきた我々の歴史は何だったのか!とついついキレそうになりますが,アリストテレスが言っているのはそういうことではなく,支配する要素と支配される要素のことを言っています。
これを魂が体を支配するような場合だと考えると,そりゃそうだよなーとなる訳です。政治的にいえば,いわゆる民主的コントロールなんかのことを考えてみれば,どんな民主国家であろうと支配の要素はある訳で,これがなければ単なる無秩序になってしまったり,独裁が横行するということを思い浮かべればよく分かるでしょう。
だからこそ,
「支配が悪しき仕方によるならば,それは双方に対して不利に働く」(22頁)という指摘が出てくる訳です。
(つづく)

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