「政治学」 アリストテレス著,牛田徳子訳(京都大学学術出版会西洋古典叢書)。
さて,国制の保全・維持を考えていきましょう。
「いかなる者に対しても均衡を破って,過度に力を増大させないことである。努めるべきは,大きな名誉を短い期間与えるよりもむしろ,小さな名誉を長期間与えることである」(272頁)
これは,以前にも引用した,功績のある者に注意せよということの現れですね。
「どんな国制においてもきわめて重要なのは,法律によっても,また財政制度によっても,公職が利得を生むことができないように規制されていることである。」(273頁)
これも,よく指摘されているところですが,なかなか改革が進まない部分でもあります。
さて,随分と飛びますが,ギリシャにおける軍事を中心に据えた国制に対しアリストテレスは批判を加えます。
「立法家が,閑暇と平和のためにこそ,軍事にかかわることやその他の法制を定めるよういっそう努力しなければならないことは,事実が言論の証人になる。あのような国家のほとんどは戦っているあいだはよく維持されている。しかしいったん支配を確立するや滅びてしまう。なぜなら,鉄の刃のように,平和にあるときはなまくらになってしまうからである。この責任は,市民に閑暇を過ごすに適した能力を教えなかった立法家にある。」(389頁)
戦争が戦争を呼び,戦争が終わると国が内乱状態のようになって滅んでしまうという経過は,世界史の中でもよく見られた現象ですね。
後半では,最善の国制における諸制度や教育のあり方について論じていきます。本書は未完の書なので途中で終わる形になっていますが,各論になると多少時代を感じさせる記述が増えてきますので,ここで終わったのはある意味正解かもしれませんね。
初のアリストテレスでしたが,満足度はかなり高かったです。他の本も是非読みたいと思わされました。
(終わり)

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