青年寄宿舎のこと 1  青年寄宿舎

わたしが30年以上前、6年の学生生活のうち4年を送った青年寄宿舎が107年の歴史を閉じる。寄宿舎を巣立った舎生は約950人。昨日、財団の最後の理事会があり正式に閉じる事務段階に入った。青年寄宿舎は植物学者の宮部金吾先生が設立した禁酒禁煙の寮で、対象は北大生、場所は植物園の北5条通りの伊藤邸のとなりにある。昨今、入舎する学生が2,3人しかおらず、基本財産をくずしながらの運営が続き、もはや存続不能、初期の目的は達した、と判断したのである。閉舎を決める前から財団の評議員として呼ばれ、ご高齢ながらてきぱきと運営する諸先輩のなかでささやかな手伝いをしてきたのであった。

 昭和45年、入学はしたものの仕送りのないわたしは安い宿泊先を探していたが、郷里関係の寮やキリスト教関係の寮をことごとく断られ途方にくれていたとき、ひょんなことから見つかったのが、この寄宿舎だった。すすけた簡素な板壁の寄宿舎は、大学のほかどこからも一切補助金などない、完全な自治寮だった。賄いのおばさんの給与は勿論、国への借地料、電気光熱費、冬の暖房用石炭の代金などすべてを学生だけで切り盛りした。2人で住む8畳の部屋は、板壁の間から外がみえ、暖房費節約のため冬はこの8畳に4人で居室とし、もうひとつの8畳は火の気の全くない寝室として使った。本当に寒かった。

 当時わたしの奨学金は8000円、舎費は朝晩の2食ついて4500円ほどだったから、残は3500円のみ、したがってアルバイトは欠かせなかった。わたしのように貧しい学生がほかにもいたから励みにもなったし、なにより寄り添うようにしながら多感なあのころを生きたことには、今、連帯感のようなものも覚える。当時のことだから、学生運動に熱心な人からバイトばかりの人、麻雀に狂う人、そして勉強一途な人、実にさまざまな人間模様だった。わたしは当時ワンダーフォーゲル部におり山ばかり登っていた。

 その中に大人びたり、青臭かったりと縦横の色合いがつくから、実に面白かった。これらは太田実くんというアマチュア小説家が同人誌「上州文学」などに着々と投稿してしてすでに活字になっている。彼の交流した人物が実名で出てくるから顰蹙も買っているようだが、個人的には舎生の記録として意味があると思うようになった。そのうちのひとつ、当時山野を跋渉していたわたしを主人公にした小説が、三好京三氏などが審査員をつとめていた北海道東北文学賞で何年か前に次席となったという驚きのニュースもあった。「この手の作品は世の中を明るくする」と三好氏が評したと聞いた。学年が2年ほど下だった彼を、近郊の沢登りから、大雪山の沢、そして日高の沢まで連れて行く過程の最後の沢登りを、地元のひととの付き合いを絡めて描いたものだった。わたしは彼にとっての、小さなデルス・ウザーラのように仕立てられていた。

 青年寄宿舎のことは、また日を改めて書くことにする。
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2007/3/1  1:09

投稿者:TAB

青年寄宿舎日誌を読んでいます。抜き書きを投稿してみます。
明治33年6月30日
午後一時ヨリ新築寄宿舎へ移転ス、夕方漸ク終リ其レヨリ祝意ノ馳走アリ、食後茶菓ヲ喫シ談笑数時、散ゼシハ拾弐時ナリ。
同年7月1日
記念ノ為メ宮部舎長ト寄宿舎生一同新築舎ノ入口ニ於テ写影ス。
(このときの写真が閉舎記念誌『我が北大青年寄宿舎』に載っています)
また、面白そうな記事を見たら投稿しようとおもっています。

2005/10/28  18:05

投稿者:take

あらら、コメント頂いていることを知りませんでした。11月3日、閉舎の記念式典が京王プラザであります。ご案内が行っていると存じますが…。メモリアルが立ちますが、跡地は残念、駐車場です。

http://green.ap.teacup.com/hayashi-kokoro/

2005/10/8  22:12

投稿者:かっての寮生

閉寮ですか・・わたしは以前から、あそこは余力が残っているうちに閉じた方がいいと言っていましたが、無くなったのはやはり寂しいものがあります。
今後は財務局の土地の一部として存在していくことになるのかな?
いつか機会があれば跡地を訪ねてみたいと思います。
つらいことがあったとき、見上げて一人慰められた楡の大木はいまでもあるんでしょうか?
何となく昔の思い出に浸ってコメントしてみました。(^^)

2005/10/8  22:12

投稿者:かっての寮生

閉寮ですか・・わたしは以前から、あそこは余力が残っているうちに閉じた方がいいと言っていましたが、無くなったのはやはり寂しいものがあります。
今後は財務局の土地の一部として存在していくことになるのかな?
いつか機会があれば跡地を訪ねてみたいと思います。
つらいことがあったとき、見上げて一人慰められた楡の大木はいまでもあるんでしょうか?
何となく昔の思い出に浸ってコメントしてみました。(^^)

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