ワンコその4。ラストです。
一紗視点。
・・・俺様になってますかねぇ・・・これ(^^;
4.
俺は彬の腕を掴むと、そのまま作業室まで引きずり込んだ。
ここなら店員以外は絶対に入ってこないから、店の客に見られる心配もない。
彬のバカタレを思い切り殴るところも見られずにすむしな。
俺はうんと頷いてから掴んでいた彬の腕を離し、自分の腕を組んだ。
そして無言で彬の顔を見つめる。
言い訳があるならさっさと言え。
無言でそう圧力をかけると彬がゆっくりと口を開いた。
「あのさ、さっきのことだけど、なんか俺が不審者に見えてたらしいいんだよね。
この間、俺がカズ兄に殴られてただろ?それを見ていたらしくてさ。
カズ兄に殴られていた俺は怪しい相手なんじゃないかって思われたみたいで……。
カズ兄が人を殴ったところも初めて見たみたいで、余計にね」
だから俺は無実だと眼で訴える彬見て、俺は睨むのを止めた。
そういえばそうだよな。
俺は彬の前では人を殴ったことがないから、そんな俺に殴られる男=不審者を言う図式が出来てしまった敦紀は、店の前にいた彬を見て怪しい人間だと思い、声をかけたのだろう。
ライ兄一筋の敦紀が彬をナンパするわけないし、彬もカイ兄曰く『一紗以外見えてない』そうなので、敦紀に自分から声を掛ける事もないはずだ。
……つい、頭に血が上っちまったよな……。
なんだかんだ言って俺もこいつのことが好きだから、他の女でも男でも好意的な態度でこいつに話しかけてるのを見ると嫉妬しちまうんだよな。
この間、俺とのデートがダメになった日だって、結局は俺以外の人間と何も言わずに飲みにいったから頭にきたんだろうし。
我ながら、嫉妬深くて嫌になっちまうぜ。
思わずふうと溜め息を吐くと、そのまま顔を上げた。
だが、顔を上げてすぐに思わず後退りしそうになったが、その体を彬が引きとめる。
……こいつ、いつのまにこんな近くにきてたんだと突っ込みを入れたくなるくらい、彬が俺の目の前にいたからだ。
「なんで、ここまでそばにいるんだよ」
じっと見つめられることが恥ずかしくて思わずぶっきらぼうにそう問いかけると、彬は困った顔をしてから静かに笑った。
「カズ兄がなんか辛そうな顔をしてたからさ。
あのさ、本当にあのことはなんでもないし、俺はカズ兄が一番好きだからね」
そう言いながら、彬が俺を額をそっと撫でた。
年下にそんなことをやられるのがなんか気恥ずかしい気がする。
だけど、まぁいいか。好きだから悔しいけど、嬉しいしな。
「とりあえず、信じてやる。
だから、今度からデートの予定が潰れた時は早めに言うのはもちろん、俺以外の人間と飲みに行くとか言うときも連絡しろよ。
お前からの電話や連絡が来ないって待つのがいやだからな」
それで全てチャラにすると付け加えると、彬は嬉しそうに笑ってから思い切り頷いた。
……だから男が可愛いってどうよ。
その頷く彬を見て俺は思わず心の中で突っ込みを入れたが、まぁ好きだから可愛くてもいいかと諦めたように心の中で呟いた。

0