・このブログに、「陶器 水漏れ」、「花瓶 水漏れ」、あるいは「花瓶、水漏れ防止」などの検索語で来られる方が結構多いので、ここにまとめておきます。
・まず、「買ったばかりの陶器は、最初にお湯で煮ると丈夫になる」という説はオカルトです。1200℃で焼いたものがお湯の100℃で丈夫になることはありません。ただし、「米と一緒に煮る」というのは素地に澱粉が染み込むので、あらかじめ素地の空洞を埋めてコーティングするという意味で有効かもしれません。
・話は逸れますが、信楽や備前など、釉薬の掛かっていない焼きものは、使う前に水に浸すと、あらかじめ素地に水が入り込んでいるので料理の汁などが入りにくくなり、臭いが付きにくくなります。そして、水に濡らすと器がみずみずしく綺麗に見えるので、料理屋さんなどでは必ず濡らしてから使っている(はず)です。
・また逆に、陶器を洗った後は素地に水が染み込んでいますので、すぐに食器棚に仕舞わず、逆さまにして土の見えている高台部分を乾かすようにすると、カビの防止になります。
・釉薬の掛かった陶器は水が漏りにくいのですが、浸みてくることがままあります。ですが、食器は水を入れておく時間が短いので、あまり問題となることは無いようです。徳利や土瓶なども、使っているうちにお酒やお茶の成分が素地に入り込んでそのうちに止まっていくようです。当窯では徳利や土瓶が焼けたら水漏れ試験をしていますが、24時間漏らなければ良しとしています。
・問題は水を入れておく時間の長い、「花瓶」の水漏れですが、うちでも荒い土を使った場合、漏れることがあります。水漏れを止める場合、「米のとぎ汁を入れておく」というのが一般ご家庭では簡単で良いようですが、うちのような製造販売窯元では売る前にそういったものを入れることはしないので、やったことがありません。
・とぎ汁を入れる際に大切なことは「よ〜く乾かしてから研ぎ汁をいれること」です。水分が残っていると、せっかくの米糠成分が、すでに素地に入っている水に邪魔されて入り込めません。また、米の磨ぎ汁で煮るのも有効なようです。
・それでも駄目なら、水性で、食用OKの撥水剤があります。
・撥水成分が懸濁した白い液体です。「CP-M6」で検索するといくつかの販売店があります。含有物はシリコーン(?)の微粒子のようです。これも前記と同様、充分に乾かしてから花瓶に入れます。
・これを入れるとしばらくして水が漏ってくることがありますが、その水が透明なら、撥水性微粉末が素地中に留まっている証拠です。1日から、漏れのひどいものは1週間くらい置いておいて瓶に戻します、
・これを天日で充分に乾かします。できれば200℃くらいで暖めてやると良いのですが、家庭では難しいかもしれません。普通の石油ストーブや薪ストーブがあれば、その脇に置いておくと良いです。乾かすのに「電子レンジを使う」のは禁物です。含まれた水分が急激に沸騰・気化して爆発する恐れがあります。
・それでも駄目なら最後の手段、信越化学工業株式会社のPOLON-Tというシリコーン撥水剤が強力です。これは建築資材屋さんなどで撥水剤として売っているようですし、ネットでも「陶器の撥水剤」として売っています。
・アウトドアな方はテントやターフなどに塗っておられるようです。これも前記同様、充分に乾かしてから使用するのですが、問題は有機溶媒(トルエン)が含まれていることです。ですので食器用には適しません。また、室内でこれを使用すると中毒の恐れがありますので、使用法を良く読み、家の外で使ってください。
・陶器の素地の問題ではなく、もろに切れやヒビが入っている場合があります。これは製造元が悪いので、クレームを付けるべきことですが、骨董品などの場合はどうしようもありません。その場合は、細い切れならアロンアルファなどの瞬間接着剤を染み込ませるのがひとつの手。大きな切れならパテか
水中ボンドを埋めてやるのが良くやる手です。水中ボンドは水で拭き取れるので、埋めたあとすぐに濡れぞうきんなどで拭き取ってやると、跡があまりのこらず綺麗に埋めることができます。
・以上、製造者としての立場から経験上の、やきものの水漏れ止めについて書きましたが、急激な加熱は厳禁ですし、有機溶剤は危険を伴いますので良くご注意の上実行してください。
参考サイト
岐阜県陶磁器試験場Q&A
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追記
・「米と一緒に煮ると良い」と書きましたが、米と同時に器を入れると、器は入れた瞬間に水を吸ってしまい、米の糊成分が入り込めない状態になるのではないかと思います。
・ですので米をあらかじめ煮ておいた液に乾いた器を入れるのが良い方法なのではないかと考えられます。(やったことがないので本当かどうかわかりませんが、、)
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2017年2月16日追記:
いまだにこのエントリにたくさんのアクセスがあることにより、どなたかの役にはたっているだろうことを感謝しつつ追記しておきます。
電話をかけてまで問い合わせをくださるかたが居られますが、上述の内容はあくまで自分のところの経験であり、小糸焼窯元では、残念ながらいっさいのご質問にお答えできません。
そのへんの事情をお酌み取りいただき、あくまでご自身の責任において行って下さい