古くから相撲界では、血は不浄なものとみなされている。土俵に血痕が滴り落ちた場合は、呼び出しがその上に清めの塩を盛り、血を吸わせた上でホウキで土俵の砂と共に掃き取る。土俵上で出血した場合は行司が“流血待った”をして、傷の手当てをさせるために一旦勝負を止める。(一昨年の初場所で朝青龍と栃東の激しい一番が記憶に新しいところだろう。)出血が止まったところで勝負を再開するが、あまりにもダメージが大きすぎると判断されると、勝負は預かりとなる。これがいわゆる「痛み分け」である。
今場所の相撲は、以前にも増して痛々しい流血が見られる取り組みが目立つ。魁皇、安馬、岩木山ら流血経験者。魁皇の鼻の傷は癒えたようだが、安馬と岩木山は、ずいぶん前にできた額の傷口が開いてしまい、ほぼ毎日出血してしまっている。流血はプロレスやボクシングの専売特許だと思っていたら、相撲でも連日の流血が見られ、痛々しさに目をそむけてしまう観客もいるのではないだろうか。額に傷ができるということは、きわどい勝負で投げを打たれても決して手をつかず頭から落ちていることを意味している。いわば、勝負魂に長けた力士の勲章である。しかし、その手当てを十分にせず、毎日神聖な土俵で古傷を開かせるようでは観客もハラハラしてしまい相撲内容に集中できないし、何よりも相手の力士の体が返り血で汚れる恐れがある。傷口に絆創膏を貼るなどのしかるべき処置をして土俵に上がるのも、礼儀作法の1つではないだろうか。
昨日と今日の魁皇の相撲は目の覚めるような前に出る圧力が発揮されている。何よりも立ち合いに待ったをせず、気迫で立っているのが功を奏しているのだろう。始めからこの気合でのぞめば、引退の噂も立たなかっただろうが。
白鵬はバネのように下半身を使っての磐石の相撲で嬉しいストレート勝ち越し。横綱は力相撲で勝ち越したが、やや勝負にこだわり過ぎて自分の相撲をつかめないままでいるように見受ける。若の里も徐々に調子を上げてきているだけに、後半戦の優勝争いが楽しみになってきた。十両の闘牙にようやく初日。

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