今日は稽古(をするほう)があって、お一人尺八の音の出し方に長らく悩んでいるかたにちょっと工夫をこらしたアドバイスをさせてもらった。ちょっとしたヒントから思い浮かんだやり方だったが、これがあたった。たぶん音が出ない原因が自分の身体で理解、納得できたと思う。いくら口で説明しても分からなかったものが、自分の感覚をとおして理解できるとあとはそれをどうしたらいいかという考え方でまとめられるので、もう難関を突破できるだろう。
習い事を効率的にすすめるうえで私が大切だとおもうのは、間違い探しである。目で見える間違い探すばかりでなく、音を聞いて違いをさがす。奥深いことまで求めると実はこれが大変だ。
音には強さがある、方向がある、硬さがある、鋭さがある、ふくらみがある、勢いがある、温度がある、圧力がある、光沢がある、湿度がある、重さがある、速さがある、位地エネルギーがある、重力がある、加速度がある、明るさがある、暗さがある、色がある、喜怒哀楽がある、などなど
これだけのパラメーターを頭の中に用意して、たとえば師匠が模範演奏した音をじっくり聴いて瞬時に各パラメータのメモリをセットし、まったく同じような音を再現、コピーすることが出来るかどうかが大切だと思っている。どうしても最初からコピーすることは出来ないだろうが、自分が出した音をもう一度それぞれのパラメーターに照らして分析してみて、師匠の音の分析結果と比較して間違い探しをするというプロセスが大切になる。たいていの人がこの訓練が出来ないため、先達の教えが正しく伝わらない。
弟子がこころがけるべきことは、師匠の音を極力コピーしきることであると思う。それができてから、自分なりの味を加えて、さらに後進につたえればいい。先達の味わいを理解していないのに、自分らしさだけを主張する演奏家があまりにも多すぎるこの時代、本当の文化が伝承されているのかが心配になる。

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