金正恩が追い詰められた.トランプから「会談中止」を宣告されて震え上がった金正恩は,あっさりと「やっぱり会おうよ」と降参してしまった.一部の報道では米国が譲歩してCVIDを取り下げたと宣伝されているが,これは大嘘だ.トランプはSNSや広報活動が得意で,微妙な発言で雰囲気を作っているが,当初の外交目標は何も変えていない.ましてや段階的非核化など一切口にしていない.
それどころか,IAEAは「今すぐにでも査察できます」と即時の出陣体制を整えた.
IAEA、北の核検証「数週間以内に着手可能」
国際原子力機関(IAEA)の天野之弥事務局長は4日、ウィーンで開幕した定例理事会の記者会見で、北朝鮮の非核化の検証について、関係国が合意して理事会が決めれば、「直前の通告でも数週間以内に再開することが可能だろう」と述べ、迅速に着手できる準備を進めていることを強調した。ロイター通信が伝えた。12日に予定されている米朝首脳会談にも関連し、関係国と連絡を取り合っていることも明らかにした。IAEAは2009年以降、監視要員が北朝鮮から国外追放されている。(ベルリン 宮下日出男)
世界のメディアはトランプの化かし合い的発言ばかり強調しているが,米国や国際機関は電光石火の出陣体制と既成事実化を着々と進めている.北朝鮮を城に例えた場合,その周りは2重3重もの大軍に取り囲まれて蟻の這い出る隙間もないくらいだ.例えるなら秀吉の小田原攻めである.
北朝鮮は軍事的にも圧倒的に劣勢であり,中国は北を見限っている.金正恩の作戦は一貫して「籠城戦」であった.金は今年の電撃訪中まで決して平壌を離れなかった.これは北朝鮮=小田原城と置き換えられ,平壌=本丸である.北朝鮮は強力な防御体制を構築して徹底的な籠城を金正日以来続けてきたのである.核や弾道ミサイルは,籠城戦で使用する「南蛮渡来の大砲」である.これがあれば,城攻めを受けたときに攻め手の本陣に一発ぶち込むことができ,攻め手は容易に「総攻撃」を仕掛けることができない.
この事態を察して攻め手の秀吉(トランプ)は,小田原城に南蛮渡来の大砲が渡るのを阻止した.そして「北条氏政が出向いてきて詫びれば,小田原と北条一族には寛大に接する」と使者を遣したのである.実際の小田原攻めでも秀吉は黒田官兵衛と滝川雄利を降伏の使者として派遣している.北条方は拒否したが,ついに7月に開城降伏した.
いまの金正恩を見ていると,トランプに城攻めされて,外へおびき出されている様に見える.「籠城戦」において,大将をおびき出して始末してしまえば,完全に決着がつく.攻め手にとってもっとも厄介なのは「城を枕に討ち死」されることだ.米国やトランプの動きを見ていると「何としても金正恩をおびき出す」ことに注力している.
金正恩が平壌(本丸)を離れることによるメリットは計り知れない.
1 軍事通信や指揮系統の傍受確認ができる
2 不在時の部隊配置や指揮官が明らかになる
3 飛行ルート上で撃墜できる
4 シンガポールで金正恩の生体情報が手に入る
5 不在のときに北朝鮮国内で反乱を起こしやすい
6 金を世界メディアに晒して神格性を剥奪できる
7 不在時に国内不満分子への援助がしやすい
8 米朝首脳会談と終戦協議は中国への打撃
まだまだ挙げればキリが無い.私が米軍関係者なら,金正恩が平壌を離れている間にF22ステルス戦闘機などを利用して,北朝鮮の領空侵犯をする素振りを見せる.あるいは空母や在韓地上部隊などで北を少しだけ刺激する行為をする.このときに必ず軍は遠方の金正恩に連絡して指示を仰ぐはずだ.これで北の軍事通信や指揮系統がかなり暴露できる.
逆に言うと,金正恩はこれだけのデメリットを犯してまでシンガポールに行くのだろうか?
きっと今の金正恩は内心不安で夜も眠れないはずだ.まさに秀吉の小田原攻めにおける北条氏政の心境だ.戦国武将ならともかく,能力の無い3代目の金正恩が正常な精神を保てるか興味がある.
歴史学者の磯田先生は「英雄たちの選択」で,今の北朝鮮を小田原攻めと比較して番組を作って欲しい.籠城戦で大将がおびき出されたらどうなるか考察して欲しい.

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