下の娘が週末に帰って来て、久しぶりにピアノを弾いています。つっかえ、つっかえですが、月光の曲です。
この曲には思い出がつまっております。1年前、バンコクからの帰国間際でしたが、ピアニストの神谷育代さんをバンコクにお招きできました。JALや資生堂などの日系企業のほか、タイの青年実業家、ジャカワンさんのご後援で、初めて実現したものでした。
私は、その裏方として走り回っておりましたが、演奏会当日は、舞台の袖で、神谷先生がつまづいたりしないように、ウロウロしながら、また、ピアニッシモの時に雑音が舞台にぬけたりしないように、用のない人が来ないように、「見張り」のためにいすに腰掛けておりました。
私の周りは暗く、カーテンの隙間から漏れる光ぐらいでした。その暗がりの中で、何曲目かにこの「月光」を聞くことになりました。最初の音が耳に入った瞬間、体が震えそうになり、涙があふれて来ました。曲の力なのでしょうか? 神谷さんの力なのでしょうか?
半年ほどかけて、何人かで走り回り、この招聘にこぎつけたものでしたが、そのすべてが、この1曲、この一瞬で報われた思いでした。

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