愛は今日は11日なので正子がまた誘拐未遂事件を起こすかもしれないと言って、夏来と郷田に公園へ向かってもらいます。郷田に電話する愛の表情が割れた鏡に映ります。
郷田は孫のナナも連れてきますが、正子は公園に現れました。私の新しい両親が現れたという話をする正子。ママはお元気?と言う正子に、旅で疲れて休んでいると答えた夏来は、正子が見舞いに来てくれれば喜ぶだろうと言いますが、さっきの新しい両親の話は愛にはしないでくれと言います。
ナナを連れ、正子と夏来が愛の許へ行き、ナナと夏来が廊下で遊んでいると、愛は障子を閉めて、二人の遊んでいる影絵が見たいと言い出します。「あの小さい影が幼い頃の美和、あなたよ、大きな影はあなた、お母さん、あなたのお父さんは亡くなる前、私とあなたの遊ぶ姿を障子を通して見ていた。そして話しかけた。また幼いあなたを決して抱こうとしなかった」と愛。「私を産んでくれなければよかったのに」と正子が言うと、「被爆した苦しさから逃れるには、あの人に抱かれるしかなかった。それが女。私という女」と愛。
夏来は職場でアメリカから日本に職場を移すことを同僚に話すと、また夏来のきまぐれかい?と言われますが、夏来は「自分から逃げてることに気付いた」と言い、「私も女なの」と答えます。
愛の家に夏来宛てにネッドから電話がきますが、愛は留守だとしか答えられません。愛は正子の家に出かけると、光岡と入れ替わりとなります。愛は正子に「養女になってほしい」と頼みますが、正子は先日現れた新しい親はDNA鑑定で実の親ではないことが分かったと言い、やっぱり赤ちゃんを殺した気がするとも言うと、「鏡を見ると思い出すことがある、荒波と助けてと泣き叫ぶ少女、そして死ねばいいと思ってそれを見ている女の私、もう以上苦しめないで、あなたの優しさが私を苦しめる」と言って、「DNA鑑定をしてください」と言い、愛を追い出します。割れた鏡に映る正子の顔。「私は誰? 私を返して!」と叫ぶ正子。
日傘を差して歩く愛が帰宅すると、そこには夏来と小林が来ていて、被爆者のアメリカ人大尉はまだ生きていて、伊澤は命の恩人だと言っている、奥様にもよろしくと言っていた、と小林は言い、明日アメリカに発つと言います。愛は、私からもよろしくと伝えて、そして私も生きていると、と小林に伝言します。小林が去ると、夏来はアメリカには戻らないと愛に言い、愛はネッドという人から電話があり、折り返し電話がほしいと言っていたと夏来に伝えます。「ママとあの人のことが心配」と夏来が言うと、愛は正子に養女の件を断られたと言い、西日が当たって空が血の色になっていると言います。
赤い障子に2人の影。「ママの流した血の色、あの人が流した血の色、それに私の血の色。女の血の色」と夏来。
正子は後部座席に乗って車で出発します。バックミラーに映る彼女の顔。荒波の前で泣き叫ぶ少女。
郷田に電話があり、正子が失踪したことが知らされます。郷田が正子の部屋を訪れると、光岡が待っていて、今朝から連絡が取れないと言い、置き手紙もないと言います。最近神経質になっていて、こうなることは分かっていたと光岡は、記憶がない女は1人では生きていけないのだから、絶対に正子を探し出すと言います。洋ダンスの一番上の引き出しに入れていた母子手帳が無くなっているのを確かめる郷田。「何であんなもん、持ってんだ?」と言う光岡の表情が割れた鏡に映ります。郷田は愛と夏来に報告し、母子手帳が無くなっているので、もう帰るつもりはないのだろうと言います。愛は「あの人は帰ってくる、母子手帳がある限り」と言い、愛の表情と夏来の表情は割れた鏡で2重、三重になります。
郷田が帰ると、夏来は「ママ、あの人、本当に私のお母さんだと思っていたの?」と尋ね、愛は「あの人はふと現れて、ふと消えてしまう神様だ」と答えます。「ごめんなさい、見えるでしょう、女の子の影が。聞こえるでしょう、あの声、無邪気に遊んでいるのが」。障子に映る遊んでいる少女の影。「あれは幼かった頃の美和、夏来、いえ、いずれあなたの産む子供の影だわ」と愛。画面は白くつぶれていき、映画は終わります。
焦茶色を貴重とした落ち着いた画調の映画で、鏡が重要な役目を果たしていました。
→Nature Life(
http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto)

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