「
トム・ダウド/いとしのレイラをミックスした男」を見ましたよ。
本編自体は90分弱のドキュメンタリーで、
トム・ダウドの偉業を全て掘り下げるには全く足りない。それでもその偉大さは十分にこの作品で感じることができますよ。そしてボーナス盤の本編未使用インタビュー集でかなり偉業の補完ができる。
このボーナス盤がついて値段も4000円切ってるっていうところがUPLINKリリースのDVDの本当に素晴らしいところ。DVDを買う意義が生まれる。大手も見習うべきですなあ。
文献などでトム・ダウドという人物がアメリカの20世紀のポピュラー・ミュージック史において本当に重要な仕事をしてきたことはなんとなく知っていたが、本人の口から生い立ちや、もしくは関わったミュージシャンから彼の仕事振りなどを聞くと全く重さが違うねえ。
元々物理学、原子力などの研究に携わっていた(しかも16歳で!)彼が、その道に進まず(その理由はいまさら大学に戻ってその道の勉強をしてもたぶん自分のほうが教授たちより最新の理論を知っているから意味がない、というもの)、バイトのように携わっていた音楽を生業にしたことによってジャズ、ラテン、R&B、そしてロックの名曲数々が素晴らしい形で音盤に刻まれる。黄金期のアトランティック・レコーズ、STAXなどの音源のほとんどに彼が関わっていたというのはすごいよなあ。
で、トムダウドという人間を追うということはアメリカのレコーディング技術の進歩の歴史を追うことにもなるのね。モノラルからステレオ、そして8トラックへと時代が移っていく中、即対応できたというのはトム・ダウドが音楽家でありながら技術畑にいたからなのでしょう。研究家気質や理論が元々備わっている人間がそこにいたという偶然。こういった偶然は神に感謝しなくてはいけないねえ、本当に。
この作品を見る前思ってたのは、彼はチャーリーミンガスもMJQもティト・プエンテもレイ・チャールズもアレサ・フランクリンもオーティス・レディングもエリック・クラプトンもオールマン・ブラザース・バンドも全部彼の手によって音盤に残されたわけでしょ?だからタイトルの「いとしのレイラを録音した男」という副題は、わかるけど、そこのみをクローズアップされるのはいかがなものか、と。
でもねえ、やはりハイライトとしてあの「いとしのレイラ」のイントロのギター部分や後半の美しいピアノソロ以降をスタジオでリ・ミックスしてしまうシーンを見せられちゃうとねえ、ちょっとウルウルしましたわ。まいりました、という思い。
ほかにもね、アレサの黄金期録音風景の映像が見れたり(これが残っているっていうのもすごいよなあ)、レイ・チャールズとの再会シーンとか見るべきシーンがいっぱいですわ、この作品。
晩年もレコード会社とディールを結んでいない新人のレコーディングに携わっていたという彼、まさに最後まで現役を貫いて人生をまっとうしたんですな。
映画のオススメコメントにも誰かが書いていましたが、レコーディングにちょっとでも関わる人間(録る側も、録られる側も)はみんな見て損がないDVDだと思うよ、ホント。オススメしておきます。N枝さんは即買いしてるような気もしますが(笑)。
よいものを見た日曜日、と。

0