研修報告「行政マネジメントシステムをいかに進化させるか〜行政計画・行政評価の実効性、PDCAと参加の問題」
日時 2017年8月23日(水)13:30-16:30
会場 図書館流通センター本社ホール
報告者 松島 幹子
<要旨>
公理とは・・・その他の命題を導きだすための前提として導入される最も基本的な仮定のこと・・・例えば「ささえあい助け合いともにつくる・・・」「安全で活力ある緑の住宅都市」とか。
計画とは、将来実現する目的たる姿と、この目的に達するための主要な目標とその手段を組み合わせたもの。
計画の必要事項
1. 目的は、公理と政策的正義で構成。
2. 目的の達成時点や目標の内容を明確化
3. 目標を最も効率的に達成する手段を選択。
4. 当該計画が持つ重要リスクの明確化・・・欠落している。民間は重視する。⇒重要になって来ている。一度決定したものを見直さないとリスクは拡大する。
地方自治体計画の制度的特性
1. 都市計画の視点からスタート・・・基本構想を頂点とする総合計画は、右肩上がりで外部環境が大きく変化しない中で、少なくともこれまでハード面での地域整備やまちづくりに機能してきた。
2. 2011年改正以前の自治法・・・基本構想義務付け。
2011年改正後=基本構想義務付け廃止。基本計画・実施計画は首長の責任で作成。
3. 政策・施策・事務事業の体系が一般的
4. 政治リスク・経済リスク・自然環境リスクを常に抱える・・・・個別の事務事業要件に必ずリスク要因を入れることが大切。リスク対応を可能な限りあげておく。
「施策」・・・「しさく」と読むほうが適切。「あまねく行き渡らせる」「実際に使う」の意味となるが、「せさく」と読めば、「めぐむ」という意味となる。
行政計画の分類として
1. 政策企画型計画・・・「まち人しごと創生」など
2. 需要対応型計画・・・介護保険の計画など
3. 個別事業計画・・・・都市計画事業に係る市街地再開発事業計画、公共施設の整備に関する計画など。
これらが妥当性・整合性を見ながら総合計画となっているが、だれも横串で見ていない。分離している場合が多い。どれだけ把握しているか。類型分けしているが。野放しになっていないか。類型、体系分けすることが大切である。1がない中で3でけ走っていることがある。
政策思考が必要・・・財政措置をうまく使うことは大切だが、しかし、それによって発生するリスクをしっかりとらえて回避することも大切である。
庁内策定プロセスの課題・・・問題解決に優れているが、新たな課題等の認識が不得意。隙間の認識がない。新しい領域を認識しない。
住民参加策定プロセスの課題・・・新しい問題の発掘に優位性があるが問題解決が苦手。
優位性判断の二元分析例・・・縦軸に必要性、横軸に満足度で分けると満足度が低く必要性が高いものは優先度が高く頑張らないといけない事業であり、満足度調査と必要性調査を1か月ぐらいずらして調査する。(満足度と必要性は親和性が高いので)アンケート調査の質を良くすることが優位性判断材料としては重要である。
コスト(負担)の見える化
1. 認識コスト・・・サービスを認知するコスト
2. 移動コスト・・・サービスを受けるために移動するコスト
3. 転換コスト・・・サービスを受けるために書類作成等手続きを通じて情報を転換するコスト
評価の本質とは、
1. 組織的形成仮説・・・評価機関は行政内部におかれ評価結果は必ずしも次の予算編成・政策形成に反エスされるとは限らないとする考え。評価結果の公表は情報共有的性格を強くし、政策議論の土壌形成を中心とする枠組みを想定。
フィードバックされても予算編成の最終判断が優先する。政策の存廃等急進的な形ではなく限定的一部修正型見直しが中心となる。⇒これが今の現実。
2. 合理的形成仮説・・・政策を目的と手段の連鎖とし社会科学的分析手段(費用対効果分析)でもたらされる評価結論は必ず次の予算編成・政策形成に反映する考え。評価方式は、数値化による費用便益分析など定量的手法で実施され、得られた結果は自動的に次の政策形成にフィードバックされる枠組みを想定。政策の存廃も含めた大胆な政策見直しを実施する。評価結果が予算編成等にフィードバックされることを前提として、評価者は政策形成には関与しない独立した位置づけとなること等に特徴がある。⇒どこまでこの性質を持っているか。政策議論の質を良くすることが重要。
PDCAサイクルを回す。評価=一定のものさしを当てはめて良し悪しを判断する。
施策単位の評価をしていかないと優先順位は難しい。
地方自治法第1条2「地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担うものとする。」・・・総合行政を担っている。幅広い範囲にわたって計画している。
PDCAサイクル、行政評価はなぜスタートしたのか・・・NPM・・・1980年代以降を中心に日本を含む主要先進国に大きな影響を与えた市場主義と新保守主義を背景とする公共経営に関する理路。@市場を通じた資源配分の優位性とA効率性の合法化を軸に「小さな行政」「官から民へ」の流れを展開する。「公共部門の現代化の流れ」とも表現されている。
規則を守ることを追及する行政経営ではなく、機能を果たしているかどうかを追及する行政経営が重要である。
説明責任を求めることが出来る。その根拠は、相手方に裁量権があるから。
市場原理や競争原理がきちんとできているか。比較していかねばならない。
執行管理型のPDCAサイクル⇔自覚的フィードバック
増分主義体質がまだ残っている。
「政策課題の重要度」×「政策目標の達成時期」に基づく二元分析で個別事業がどこに入っているのか可視化をすることは重要である。
<研修を終えて>
「総合計画」が法定計画でなくなって久しい。隣の藤沢市はいち早く総合計画の策定をやめた。基本構想を頂点とする総合計画は、右肩上がりで外部環境が大きく変化しない中で都市計画の視点からスタートしてきた事を考えるとこれからは右肩下がりになっていく時代にはあっていないと感じた。策定には費用と時間がかかる。総合計画の策定については見直すべきではないかと思う。現在のように外的リスクが変化している時代においてはリスク対応をしつつ計画は見直していかねばならない。総合計画を作ってそれにしたがってやっていく時代ではないと感じた。茅ヶ崎市は増分主義の政治が色濃く残っている。まずは、総合計画策定の意義について議論することろから始めるべきであるとも感じた。市民アンケートの質、分析の質を高めていくことも課題である。

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