研修報告「2018年度地方財政政策と課題」「政策的思考」事例研究
日時 2017年11月2日(月)13:30-16:30
会場 図書館流通センター本社ホール
報告者 松島 幹子
<要旨>
2018年度地方財政の政府方針
1. 経済財政運営と改革の基本方針等への対応・・消費税分をどこまで地方自治体へ分けるのか
2. 一般財源総額確保と地方財政健全化
3. 地方行政サービス改革と財政マネジメント強化・・事務処理のクラウド化(独自または共同)・・・総務省では共同のクラウド化を推奨
子ども・子育て支援
1. 新たな社会保険方式・・子ども保険の創設。全世代型保険制度の実現。訳3500億円規模(保険料率0.2%)医療介護給付改革
2. 子育て安心プラン・・遅くとも2020年度末待機児童解消。2022年度末助成就業率80%達成・・・行政職員構成との関係
所得階層別可処分所得変動・・・企業利益は出ているが、消費にはつながってこない。所得602万円ぐらいの世帯が一番可処分所得が減っている。施策に対するメリットがあまりない世帯。
非消費支出(租税・社会保障負担等)の増加・・・2001年以降、ぐっと増えてきている。賃金が上がっても負担が大きいので可処分所得が増えていない状況である。
低金利と借入金返済額・・2001年以降6万円⇒8万円へと平均が上がっている。住宅市であれば中間層のサポートをどうするか考えなくてはならない状況。
公務員試験は3倍を切ってくると質の低下が来ると言われる⇒どうだったのか?
職員構成はどうなっているか⇒国家公務員は凸凹がない。
地方創生等推進
まち・ひと・しごと創生事業費・・・今までは行革努力分、取り組み必要度分で交付税算定されていたが、今後は活性化分、成果分へシフトされる。成果を説明できる構図が必要となる。
一般財源確保等について・・・地方税充実確保として
1. 森林環境税の検討・・何に具体的に使ったら良いのかが課題。街路樹の植え替えに使っているところもある。
2. 地方消費税清算方法の見直し・・・人口割15%⇒17.5%従業員割10%⇒7.5%へこれによって都市部では結構影響を受ける。どのように把握しているか。
3. 税務行政の効率化
4. 地方税の電子化 等
地方行政サービス改革と財政マネジメント強化
1. 行政サービスのアウトソーシング
2. 情報システムのクラウド化
3. 公共施設等の適正管理・最適配置
4. 財政の見える化
5. 公営企業会計の適用大
6. 公営企業の経営改革推進
納税者や民間事業者から信頼を得る=コンプライアンスの本来の意味
アウトソーシングの拡大について
1. 民間委託の導入拡充=民間事業者が相手なので税務署、国税が入ることによってなぜこんな支出があるのかが問題となる場合が出る。たとえば修繕は寄付行為ではないか。
2. 指定管理者制度の導入拡充、総合事務センター等の導入で問題となるのは所有権、固定資産税は取るのか?・・・PFI契約の中でやる方法が多い。
窓口業務にみる質的変化
1. 窓口業務は事実上、非定型で専門性が高い。ワンストップ化機能が複合するほど非定型・専門性が高まる。
2. 制度・運用変更が激しく、周知徹底に限界。正規職員でも対応限界。ナビゲーションシステムの機能も制約的。
3. 問い合わせ・相談教務との定型的業務の区別が困難。
4. バックヤードとの連携に限界。
以上の点から業務についての情報の蓄積・伝達の視点から再整理することが必要である。
情報システムのクラウド化については地方自治体の独自性という意味でクラウド化をどうやるかは大切である。クラウド化については自治体クラウド導入への交付税措置がある。しかし、カスタマイズの抑制がある。=共通化すると国にも情報が入るので統制しやすい。
公共性とは、不特定多数の人が使う事・・・図書館の全国の利用率の平均は20%というデータがある。
公共施設等の適正管理・最適配置に関して・・・利用率を見るときに特定の人だけが使っているのではないか?不特定の人が使っているか?の視点も大切。
静岡県河津町町長リコール・・・複合施設建設を巡り、住民投票条例がなくて住民投票が出来ないので町長リコールまで行った。
公共施設等の適正管理地方債措置
1. 集約化・複合化
2. 転用事業
3. 除去事業
4. 長寿命化事業
5. 立地適正化事業
6. 役場機能緊急保全
財政の見える化・・・国が財政統制するためのツールであるが、住民の意思決定に活用できるようにする。
1. 住民一人当たりの決算額等の徹底
2. ストック情報の充実・・減価償却率の将来負担比率との組み合わせ
3. 地方自治体基金の要因把握分析
4. 一般単独行政経費の実態把握
5. 地方自治体間の重複排除による決算把握 等
全国積立金現在高が2004年は約13兆円だったのが増加し2015年には約21兆円へと増加し続けている。地方財政はこれからはリスクが高いので保有していることは必要である。
国債の保有構成で日本銀行保有率かどんどん上がっている。現在約1000兆円の約40%、400兆円を日本銀行か持っている。元の水準に戻すためには300兆円を民間から吸い上げねばならない状況。当面は何もできないのではないか。一方、リートには値下がりしそうな不動産がたくさん流れ込んでいる。
働き方改革・・・ワークライフバランスはどのくらいの期間でバランスがとれていればよいのか?議論するのであれば行政側に資料を作ってもらってからの議論が必要であろう。横軸に超過勤務時間が多いか少ないか、縦軸に取得休暇日数が多いか少ないかでプロットすると見えてくる。
1. 右上(超勤多・年休多)・・仕事の性質上、繁忙期がある。残業は一定量あるものの、職員のワークライフバランスに対する満足度は高い可能性あり。
2. 右下(超勤多・年休少)・・・ブラック。業務量が多く、人員不足。かの人員が少なく、月別の超勤の差が多きい。
3. 左上(超勤少・年休多)・・・健全?仕事量と人員のバランスがよい(業務量に比べて人員多すぎ?)エリアの中でも左上に位置する課に関しては、ほかの職場に比べ人員配置が適正かどうか疑問。
4. 左下・・年休が取りづらい(超勤少・年休少)・・日中職員数が必要な職場。土日の振り替えが多く年休を消化できない? 比較的健全な職場とも言えるが、エリアの中でも左下に位置する課に関しては、ワークライフバランスの観点から適正かどうか疑問。
※すべての課で均一ではない。このような図にしてみると良く分かる。作成することは必要。
国の予算と地方財政計画の関係・・・国庫支出金についてはだいたい11月に積算するので3月までに景気が大きく変動した場合には大きな影響を受ける。
問題の原因を探る手法の一つであるCS 分析は大変有効。エクセルで簡単にできるのでアンケート結果の分析をきちんと深く行うべき。
これからは満足度が高くてもやめなくてはならない施策も出てくるだろう。
<:研修を受けて>
茅ヶ崎市の基金残高は減少している。全国の自治体が増やしている中で減少していることの原因は、公共施設を増やしているから建築費、ランニングコストが増加していることによる。「公共施設等の適正管理・最適配置」が言われている中で、既に今ある公共施設の24.9%は減らすべきという秦野方式の計算式で出ていた(2013年3/2週刊ダイヤモンド 特集「ハコモノが地方を潰す あなたの街の時限爆弾)にもかかわらず公共施設建設ラッシュが続いていることは大変不幸なことである。見直しもされず、基金も取り崩しつつ建設が進み、今後も進もうとしている。今後、将来負担率の増加として見えてくるだろう。
また、窓口業務については臨時職員、嘱託員がついていることが多いが専門性が高いので正職員が対応するように検討すべきであると思う。人員配置についてはワークライフバランスの観点から有休取得率、残業時間の2つの軸で課ごとに色分けして出すとその課の配置人数が適切か否かなど見えて議論のもととなることが分かった。検討しなくてはならないと思った。

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