研修報告「自治体経営と内部統制 @内部統制の基本」
日時 2018年4月24日(火)13:30-16:30
会場 図書館流通センター本社ホール
講師 宮脇淳 北海道大学大学院法学研究科・公共政策大学院 教授
報告者 松島 幹子
<要旨>
内部統制を考える対象は@政策論 A政策情報論(内容が形成される情報は何だったのか共有する。特に財務管理と情報管理はリスクが大きい)B政策過程論(PDCAサイクルについて内部統制として載せて行かなくてはならない)
内部統制の仕組みは @内部統制制度化 A監査制度の強化 B住民訴訟制度の見直しの3つからなっている。総合計画を作るのであれば進捗管理などをきちんと管理していくことが内部統制の大きな役割。また、外部からのチェック機能を強化すると共に内部のガバナンスを強化する事が重要である。
監査委員の役割の強化として、内部統制制度を導入すれば、これまで監査対象としていた部分の一部を省力化し特定の部分の重点化する事が可能となる。
地方公共団体における内部統制導入の必要性が高まっている。その理由として、人口減少の進行に伴い高まる地方自治体の役割がある。執行業務を効率化をしなくてはその要求に応じられない。
平成28年3月に出された第31次地方制度調査会「人口減少社会に的確に対応する地方行政体制及びガバナンスのあり方に対する答申」において団体規模に配慮しながら、全ての長に対して内部統制体制を整備及び運用する責任があることを明確化している。⇒対象市ではなくとも交付税評価の対象とするだろうことが予測される。
内部統制の対象は @法令順守 A情報管理と伝達 Bリスク評価と対応 C業務の効率性 である。
地方自治体の対応優先度が高いリスクとしては @財務会計行為 A情報管理 であり、内部統制制度を設けた自治体は運用と報告の義務が発生する。内部統制に関する訴訟リスクも対応優先度が高いリスクである。
現在、地方自治体にとって最も必要なものは住民からの信頼である。信頼がなければ地方分権も行政改革も進まない。=職員の不正な業務執行の防止、住民に直接影響のあるミスをなくす、適正な財務書類の作成とわかり易い公表が特に必要となってくる。これからのマネジメントの新たな視点としては組織的に、リスクと正面から向き合い、リスクが発生する前に必要な対策を講じるこしが重要である。
内部統制整備・運用の具体的内容としては @統制環境 Aリスクの評価と対応 B統制活動 CモニタリングとなるがAのリスクの洗い出し、リスクの分析・評価・特定が一番欠けやすい部分である。リスクの洗いだしは1年間やれば基礎的リスクは減る。⇒楽になる。⇒引継ぎが楽になる。⇒イレギュラーなものについてはさらに付け加えていく。
住民訴訟事例については、場合によっては判断基準が議会の議決であることも。
住民訴訟事例の引き継ぎ不十分型の判決において注目されることは、部下への引き継ぎは能力の応じてまからーせなくてはならないとの判決があり、その処理を各担当の部下に任せていたことは特段に非難されるべきことではないとする判決事例がある。
住民訴訟において前例踏襲型についての住民訴訟で元市長、助役などに対して在任期間に応じて約4億5千万円〜1700万円゜の賠償命令が出た例がある。
宮城県における内部統制の導入例について・・・知事コメントによると復興本格化に伴う業務増により、不適切な案件が増えたと監査委員から指摘された。そのためチェック体制構築のため、新たな内部統制システム導入の検討を開始した。苦労した点としては、自治体への導入事例が少なく理念等の具体化にも苦心したが、結果としては理念にあまり拘らず「誰が何をすべきか」を中心に具体的な取り組み内容を計画に落とし頃こととした。
大阪市の内部統制の概要について・・・業務上のリスクが存在することについて、リスク把握・評価を通じて基本的な認識が共有された。リスク低減のためのルールや基準はあるが、ルールを順守するためのプロセス(標準化・文書化された手順・工程)の整備が十分ではない。プロセスに従って業務を行っているかをチェックするための仕組み(モニタリング)も強化する必要がある。
市職員の管理職登用への試験の辞退者が多い。職員の採用の競争倍率は3倍を切ると質の低下が起こるとされている。どうなっているか調査すべきでいる。
内部統制にとって職員採用と研修は生命線である。
<研修をふりかえって>
ここのところ茅ヶ崎市では市立病院医薬品盗難事件など職員による問題が多く出ている。脱公務員試験宣言で公務員試験をなくして面接で採用してきたが、果たしてこれでよいのだろうか。「内部統制にとって職員採用と研修は生命線である」にはどきりとした。
昨年に引き続き何度か内部統制の研修を受けることによってより重層的に違う角度から学ぶことが出来た。

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